TOP > 大会・研究会等 > 研究大会 > 2010年度 / Update: 2011.7.2
2010年度の研究大会を,標記のとおり開催した。会場校・相愛大学より全学挙げてのご支援を賜った。 第1日は個人およびグループ研究発表,第2日はシンポジウムを行った。延べ170名の参加があった。1日目のグループ研究発表終了後,「図書館研究奨励賞」を川崎良孝理事長から木川田朱美会員に授賞した (→講評)。西村一夫事務局長等による会務報告ののち,交流会を持った。
文部科学省『学校図書館支援センター推進事業』に呼応した,公共図書館と学校図書館の連携の推進事業を,福岡県小郡市を中心に把握。その効果及び問題点を明らかにした。結果,この事業を一定評価するが,学校図書館支援から学校支援へ移行することの必要性を指摘し,実行方策を講じた。
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コンビニ(2店舗)経由のサービスを始めた所沢図書館を対象に検討した。利用者数,貸出冊数は増加(現6店)。登録者数に明白な増加はない。利用者層は多様である。効果は利便性にある。当事業成立の鍵は,図書館,コンビニ双方の自律的熱意,金銭的負担ゼロ,予約方法の単純性にあると結論した。関係域初の報告例であるとの自覚を付した。
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深耕した「新しい目録法」の基盤,FRBRから2010年完成のRDAに至り,下記の点を検討した。
1)目録規則,RDAの機械可読性
2)MARC21におけるRDAへの対応
結果,FRBR等の導入に一定の意義を認めるが,目録規則内での意味的構造化には未だ困難な面が認められると論評した。
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4度目の「電子書籍元年」翌年の今,関係議論を事業モデル,プラットフォーム,技術,ダウンロード通信,課金モデル,価格決定権等に整理・集成,レビューした。三省懇など行政とのW3C規格との調整を問う。一方,「長尾構想」など国立国会図書館の大規模電子化推進事業等に言及し,図書館の立ち位置について検討,総括する。
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学校図書館についてどのように教えているか聞きたい,との質問を司書課程(公共図書館司書を養成)教師に向けてアンケートし,このように教えてほしいとの要望を提言としてまとめた。昨年に続くが,改正省令科目を軸としている。約半数が非回答(未返送)の現実を,司書課程の教師の学校図書館への関心の薄さの証明と,グループは指摘している。
司書講習科目から今般の「大学における科目」まで断絶はないが,嚆矢1950年省令成立の経緯を探る先行研究がないとして,下記3点にまとめた。
1.占領:教育再編,館員再教育目的→図書館法
2.Japan Library Schoolの場や米人講師の活用
3.『図書館学講義要綱』(初版)の策定
あわせて,大学基準協会基準等の影響を受けた。
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2単位化する新「児童サービス論」に関し,開講が予測される238校に対してシラバスを調査した(2010年6月)。
・大学ホームページ上で把握。
・以外の大学にはコピー送付を教務課へ依頼。
回答不把握は3校と,把握率は99%。単位数,科目名,教員等について調査した。他科目との併合等多様。過半数が非常勤。専任教員の中にも当分野団体への所属がなく,関係論著のない教員が少なくない。授業展開についても繊細,詳細にまとめ,今後への示唆とした
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選書に努めたはずだが,児童書架が荒れている。どうするか。異動先で直面した現実と改革の報告。
理念編:現場の貸出データを参考に「誰のための選書か」を考え,まず発想を子ども側へ転換した。
実践編:現場で実際に選書する方法を探った。読まれない本よりも,読まれる本を優先。選書に関わる司書が時代や子どもの現実を認めることとした。
以上の実践のもと,子どもの読書の自由を守ることを結論とした。客観的分析を理論化に繋いだ。
情報通信技術の発達に対応するワンストップ・サービスとして北米大学図書館で生まれたラーニング・コモンズと学生アシスタント活用の意義を文献調査によって把握。またその実態を,海外の大学図書館3校への訪問調査と,日本におけるこの関係事の普及実態を質問形式をもって採録し,手厚く分析,表構成し,まとめた。
『中小都市における公共図書館の運営』(1963)の普及に尽力し,特別委員として日野市立図書館に貢献したが,早世で著作が少ない森博(1923−1971)について,思想等を確かめようとした。その第一として,菅原勲,福嶋礼子,鈴木健市氏等へのインタビューをもとに,若き日の気賀町立図書館長時代の森に遡り,その図書館活動をまとめた。個人研究,図書館思想研究の基礎資料となるよう図った。
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図書館での貸出サービスを,実例を土台に考究した。
1.利便性の現実と基本ポリシーを整理・集約した。「すべての資料の提供」範囲内にある。
2.電子書籍等デジタル資料の貸出にはある種ダウンロードが伴う。期限等のガードはかけうる。
3.課題は,囲い込み業者の磁場で動き,点数に限界があるうえ,資料費を侵食するであろう現実。国立国会図書館等,国レベルの真っ当な電子化政策をもって展開すべきであるむね,主張した。
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別紙で立てたテーマ設定によって,国レベル,全国レベル,公共図書館,大学図書館で元気な図書館活動を導いておられるリーダーにお越しいただき,発表を受け,シンポジウムを持った。ただし,長尾真国立国会図書館長は,所用にてシンポジウムを欠席された。午前中は全4人が40分ずつ講演した。
◎発表 9:50〜12:40 好天気で,会場も立地がよく,相愛大学関係者,特に杉本節子准教授のご尽力にあずかった。
発表申込と概要原稿の日限厳守も励行され,発表時間も概ね守られた。提出予稿が常識的に発表時間を越える分量のものが多く,しかも発表時の縮約原稿が用意されていないと見ざるを得ない発表があった。予稿集作成費用13万8000円,例年の5割増し。
グループ研究発表は,「新味がない」ものがあったが,研究助成が2年単位であり,「考察不足」といった旧年の評を乗り越えるものが認められた。研究委員会に対して「事前に精査,チェックすべき」と旧年度は厳しい意見が寄せられたが,発表のための「概要」の提出をさらに厳格にした。今年度の大会発表の受付では,研究委員会から各グループに自己評価を求め,年間活動の総括を求めた。改善されたと評価するが,一層の緊張感を求めたい。
シンポジウムは,議題そのものへの評価は得た。しかし次の点に批判を受けた。1)メンバーの構成,2)時間配分である。なお「見にくい」との感想が多かったパワーポイントは,個人・グループ発表,シンポジウムとも,当日の発表資料を,発表者の了解を得た範囲で日図研ホームページにアップする予定である。
熱心な参画にお礼を申し上げたい。>
(文責:志保田務 研究委員長 桃山学院大学)