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日本図書館研究会研究例会(第362回)報告


日 時:2020年11月8日(日)13:00〜16:00
会 場:オンライン開催
テーマ:学校司書研修プログラムを考える
発表者:学校図書館研究グループ
参加者:30名

 学校図書館研究グループでは,これまで「学校図書館と公共図書館の連携」について,調査研究を実施してきた。
 近年,全国の自治体に不安定な身分ながら学校司書の配置が進んでいる。学校司書は多くがひとり職場であり,
 十分な研修や引継ぎもなく,日々悩みながら図書館業務をこなしている場合も多い。私たちはこれまで公共図書
 館が教育委員会と協力して,学校司書への研修を実施している自治体(姫路市,枚方市)に聞き取り調査などを
 実施した。その中で,学校司書が知識として身につけておいて欲しい内容が,テキストにまとまっていれば研修
 がやりやすくなるのではないかと考えた。
 この研究例会において,未完成ではあるが私たちが考えた「学校司書研修テキスト(案)」を使って模擬研修会
 をすることにした。
 
《研修会の想定》
・実施時期:4月から8月
・実施時間:約3時間の半日研修
・配布資料:学校司書研修テキスト
・研修会講師:先輩司書など
・参加対象者:学校図書館で初めて働く新人,司書資格をもっているが学校図書館のことをあまり知らない
・目的:「図書館とは何か」を学んできた人たちが,さらに「学校図書館とは何か」を学ぶことで,学校司書とし
 てのスキルアップすること
・内容:テキストの前半部分(0−3章)

《学校司書研修テキスト目次》
0.はじめに
1.学校図書館とは何か
2.教育に資する学校図書館
3.教育活動と学校図書館
4.学校図書館を支えるネットワーク
5.学校図書館におけるボランティア
6.まとめ   (資料)
 今回の模擬研修会では,実際の活動を知っていただくために,先輩の学校司書から現場の実践をテキストに沿っ
 て紹介する手法を取った。

 学校図書館と公共図書館には,根拠となる法律(学校図書館法,図書館法),サービス対象(児童・生徒・教職
 員,地域住民),担当職員(司書教諭・学校司書,司書)と違いはある。しかしながら,学校図書館も公共図書
 館と同様に資料提供を基本としたサービス機能を持っている。
 1章では,学校図書館として,知る権利を保障するために現場の学校司書が普段どのような活動をしているか
 事例を挙げて説明した。
 子どもたちが探している資料(調べ学習,物語など)を提供する様子,読んでみたい本が一冊もない図書館では,
 司書に「こんな本ありませんか?」とは聞かない。教科書を読みそれぞれの単元で図書館としてどのような活動に
 つなげられるか,司書個人ではなく司書会などチームを作って対応することが必要になる。
 また,学校司書が仕事で迷ったときには,学校図書館法とユネスコ学校図書館宣言に立ち戻って考えることが大
 切である。
 2章では,「教育に資する学校図書館」について,テキストの項目に沿って参加者に質問しながら具体的に次の点
 について説明した。
 校内組織での図書館の位置づけ,図書館予算(図書費,消耗品費など)必要となる品目,執行手順の確認,予算
 増額の方法,予算額の決定過程の把握,校務分掌のなかで経営・運営方針や年間を通した利用計画を作成し年度
 初めの職員会議で提案,校内での図書館研修など,校長・司書教諭・学校司書が学校図書館の機能を十分に発揮
 できるよう,互いに連携・協力し組織的に取り組むことが大切である。
 また,図書館のサービスとして,資料提供,貸出,予約制度,レファレンス,フロアワーク,読書意欲を刺激す
 る活動,資料の収集・管理,場としての学校図書館などがある。学校司書は学校図書館の基本である資料提供を
 行いながら,学校教育の充実ために常に新しいサービスを見つけようとする姿勢を持ち続けなければならないこ
 とを説明した。
 参加者からは,内容が濃すぎて新人にどこまで理解できるか,繰り返し研修をする必要があるのではないか,チ
 ェックシートを取り入れて現状分析が容易にできるようなテキストにしてはどうか,先生とどう向き合えばよい
 かアドバイスが欲しいなどの意見をいただいた。これらを参考に「学校司書研修テキスト」をまとめて行きたい。
                             (文責:谷嶋正彦 学校図書館研究グループ)