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日本図書館研究会研究例会(第361回)報告 2


日 時:2020年10月18日(日)10:00〜15:00
会 場:エルおおさか南ホール(南館5階)
    *オンラインでも開催
共 催:エル・ライブラリー(大阪産業労働資料館)

例会2(13:15〜15:00)
テーマ:私的回想・70年を重ねた図書館法−図書館法70周年を記念して
発表者:塩見 昇氏(大阪教育大学名誉教授)
参加者:57名(現地31名,Web26名)
 本年は1950年に制定され,図書館事業の進展を支えてきた図書館法の70周年である。塩見氏は図書館界
に身を置いて60年,図書館人としての歩みの中で図書館法の節目ごとに何らかの発言をすることも少なくなか
った。面白いことに図書館法はおよそ10年ごとに大きな変動に直面してきた。法改正が行われたり,法に関連
する図書館行政や施策の動き,運動の高揚がみられたりしてきた。
 今回は,氏の図書館法とのかかわりに焦点を当てることで,図書館法が図書館の活動や運動とどのように関連
してきたか,図書館法の果たしてきた役割,意義などについてお話しいただいた。
 レジメに書かれた項目は以下の9項目である。残念ながら時間が足りず,全てを詳しくお話しいただくことは
かなわなかった。印象的だったのは,塩見氏が図書館に入る前の図書館法のことについて(レジメの番号では1
及び2),「1960年に大阪市立に入職した私として,この時期については特段『回想』する(できる)こと
はない」,と前置きしつつ結構時間を割いたことであった。敗戦の混乱の中で(始まりは戦前であったが)図書
館法制定のために奮闘した先人に対する塩見氏の敬意を感じた。

1 図書館法制定まで(1946−50)
2 制定からすぐに始まる法改正運動(1951−61)
3 『中小レポート』で初めて出会った図書館法(1963)私と図書館法の出会い
4 図書館法改廃問題(1970−72)
5 図書館事業基本法問題(1981−82)と「公立図書館の任務と目標」策定
6 構造改革・規制緩和の観点から図書館法批判高まる(1970年代末−1999年改正)
7 教育基本法改悪に連動する2008年改正
8 第九次地方行革推進一括法による2019年改正
9 図書館法のこれからに向けて

 そもそも先人達を図書館法の制定に走らせたのは,図書館の義務設置への願いであった。強い法律によって図書
館設置を義務付けられれば,結果豊かな国庫補助が受けられる。また,中央図書館制を敷いて,そこが他の図書館
の指導をすることや司書職制度を整備すること等が図書館法に盛り込みたいこととしてあった。しかし制定された
図書館法にその項目はほとんど入れられなかった。その代わり「図書館奉仕」という高い理念が登場した。今の図
書館法第3条とほぼ同じ内容である。
 塩見氏が初めて図書館法と向き合ったのは,1963年春,当時上司であった石塚栄二氏の紹介で『中小レポー
ト』を知り,職場で読む勉強会を呼びかけ,始めた時であった。それが図書館法第3条(図書館奉仕)を具現化す
る活動への導入となった。つまり,公共図書館の本質的機能の追求,図書館法第3条の構造的な理解へつながって
いった。
 1971年の図書館法改廃問題では,図問研事務局長として法を守る運動の先端に立つことになった。
 『公立図書館の任務と目標』策定に関するお話もあった。事の発端は1980年,議員立法で「図書館事業基本
法」を作ろうとの提案が出されたことであった。その策定に日本図書館協会はじめ図書館関係団体も動いたが,出
された案に対し批判・論議が盛んに起こり,結局最終的なまとめもされずに頓挫した。そのような動きを受け,図
書館協会として改めて図書館政策を持つ必要があるだろうと図書館政策特別委員会(委員長は関西の森耕一氏)が
改組され,まとめられたのが『公立図書館の任務と目標』であった。
 この例会は当初6月に特別研究例会として開催される予定であったが,今般のコロナ禍で延期されていた。研究
例会はもともと塩見氏が研究委員長の時に開始したもので,集客の多寡に関わらず,興味のあることを発表できる
場を作ろうという意図だったそうだ。今回の開催も塩見氏の希望によるものであった。Zoomによるオンライン開催
と従来通り会場で聞いていただく現地開催を併用した初の試みで,支えるスタッフも試行錯誤しながら行ったが,
途中でホストコンピュータが原因不明で落ちてしまい,講演が中断した。その後別のホストを立てたが,オンライ
ン参加の方々には動画をお届できなくなり,画像と音声のみになってしまった。深くお詫びしたい。
 この点についてはしっかり反省し,今後の運営等に生かしたい。
                                 (文責:村林麻紀 八尾市立八尾図書館)