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日本図書館研究会研究例会(第352回)報告


〈第352回〉
日 時:2019年11月2日(土)18:30〜20:30
会 場:日本図書館研究会事務所
テーマ:少年院・少年鑑別所の読書環境について:「少年院・少年鑑別所における読書環境等に関する
    調査2019」報告
発表者:日置 将之氏(児童・YA図書館サービス研究グループ)
参加者:11名
 この発表では,児童・YA図書館サービス研究グループが実施した「少年院・少年鑑別所における読書環境等
に関する調査2019」の結果に基づき,少年院等における読書活動や図書館との連携状況等について報告した。
1.調査の概要について
 本グループでは2013年に同様の調査を実施し,第304回研究例会等で結果を報告している。同調査の実
施以降,2015年に少年院法を抜本改正した新法が施行され,少年矯正を取り巻く状況が変化していることか
ら改めて調査を実施した。調査対象は全ての少年院と鑑別所(計103施設)で,全32問の質問紙を対象施設
に郵送し,回答を返送してもらった(調査時期は2019年1月〜2月)。回収率は少年院39施設,鑑別所
33施設の計72施設で70%だった。また,読書活動が活発で図書館とも連携している2施設への訪問調査
(2019年10月)も行った。
2.調査結果について
 調査結果の中から,基本的な項目や特徴的な項目に絞って報告した。
 蔵書冊数の平均(概数含む)は少年院が5,070.2冊,鑑別所が2,767.8冊だった。少年院は前回
調査を下回り,鑑別所は微増している。
 年間資料購入費の平均(概数含む)は,少年院が236,984円,鑑別所が154,032円となっており,
少年院,鑑別所ともに前回調査よりも減少している。
 蔵書数,年間資料購入費ともに,少年院が鑑別所を大きく上回っている。これには,両施設の収容期間や規模
等の違いとともに,少年院が矯正教育の実施を主目的とした施設である点が大きく影響していると考えられる。
 寄贈の有無については,少年院では回答のあった全ての施設で,鑑別所でも1施設を除いて「あり」との結果
だった。蔵書に占める寄贈の割合は少年院が平均14.9%(最高70%),鑑別所が平均15.3%(最高
70%)だった。両施設ともに前回調査より寄贈割合が微減しているが,寄贈に大きく依存している施設が存在
している点は前回と同様だった。
 自弁書籍(差入れや購入により少年が所持する私物の書籍)の扱いについては,両施設ともに平均所持可能冊
数が大きく増え,所持期間の制限も緩和されており,前回調査から大きく変化していた。
 読書を活用した矯正教育の実施状況については,少年院は全施設で取組みありとなっており(前回は「なし」
の施設もあった),鑑別所でも「あり」の施設が増えていた。具体的な取組み内容については,読書感想文や朝
の読書等の他に,ビブリオバトルやポップの作成といった新しいものも複数見られ,取組みの幅が広がっていた。
 図書館との連携施設数については,前回調査時より大幅な上昇が見られるものの,依然として「知っているが
利用していない」施設の割合は高かった。連携の内容は多様化しており,図書館見学や少年による書籍整理等,
前回は見られなかった取組みが増えていた。
3.考察
 少年院と鑑別所とでは,少年院の方が読書環境は充実した施設が多く,多様な取組みもなされていた。また,
男子施設と女子施設とでは,女子施設の方が充実していることが分かった。
 2013年との比較では,少年院については平均蔵書冊数,平均予算ともに減少しており,鑑別所でも平均予
算は減少していた。この点については,少年による書籍の購入が容易になるなど,自弁書籍関係の制度が新法施
行によって整い,利用が増えたことが影響している可能性がある。また,読書関係の取組み内容多様化や,図書
館との連携施設数が大幅に上昇している点についても,「再非行防止に向けた取組みの充実」や「社会に開かれ
た施設運営の推進」を目指した新法の施行が一定影響しているものと思われる。
                                         (文責:日置 将之)