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日本図書館研究会研究例会(第338回)報告


日 時:2018年5月12日(土)15:00〜16:30
会 場:大阪大谷大学ハルカスキャンパス LectureRoomA
テーマ:京都大学貴重書デジタルアーカイブと二次利用の取り組み
発表者:大村明美氏(京都大学附属図書館)
参加者:16名

 京都大学では平成29(2017)年12月1日より京都大学貴重資料デジタルアーカイブを正式
 公開し,インターネット上で公開している貴重資料(附属図書館所蔵)画像の二次利用を自由化
 した。当館デジタルアーカイブのシステム概要や搭載資料,貴重資料画像の二次利用自由化の規
 約作成の取り組みなどを紹介した。
 
 京都大学の貴重資料電子化公開は,平成6−7(1994−1995)年度の維新特別資料文庫
 の電子化から始まった。平成10(1998)年度に「京都大学電子図書館システム」を公開し,
 以降も資料の電子化を進め,平成22(2010)年度に京都大学蔵書検索KULINEでの画像公開
 が始まり,今回の京都大学貴重資料デジタルアーカイブの公開に至る。また近年の大規模電子化
 プロジェクトの説明が行われ,河合文庫,富士川文庫,中井家絵図・書類などの資料を紹介した。
 平成29(2017)年度末までで電子化した資料は1万タイトル以上であるという。

 京都大学貴重資料デジタルアーカイブのシステムは,サイト構造・メタデータ,インターフェー
 スの管理を行うDrupal(CMSサーバ)とTIFF画像のアップロード・変換,公開を行うIIIF画像サ
 ーバからなる。

 今回公開したデジタルアーカイブは,「京都大学重点戦略アクションプラン(2016−2021)」
 の取り組みの一つの「オープンアクセス推進事業」の一環として実施された。学術論文の収集と発
 信を加速させるとともに,長年継続してきた貴重な学術資料の電子化と公開をさらに発展させるこ
 と,学内外の研究コミュニティとの連携を進め,収集・蓄積したコンテンツの国際流通促進をも図
 ることを目的としたという。

 今回のデジタルアーカイブ公開と並行して,附属図書館が所蔵する貴重資料の画像の二次利用の自
 由化を行った。画像の二次利用には,所定の申請手続きがこれまで必要であったが,所蔵館と画像
 改変時にはその旨の明示を条件で,自由な二次利用を行なえるように,規程を変更した。規程の変
 更については,京都大学図書館保管資料特別利用規則に新条項を加え,また「京都大学附属図書館
 本館における「インターネット上で公開するデジタルデータの特別利用」の条件に係る内規」など
 を定めた。

 権利関係については,平面複製である電子化画像の作成においては作成者に著作権が発生しないと
 いう法解釈に基づき,クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)による利用ライセ
 ンスの表示は採用しなかった。デジタルアーカイブのなかで権利関係の示す独自のアイコンを設定
 し,利用者への二次利用自由の周知を行っている。今後は地域の観光案内や展示会等での利用など
 活用が広がることを期待しているという。
 
 講義後に質疑応答を行った。メタデータの作成に所属大学の研究者がどのようにかかわるべきかや,
 中小規模大学がデジタルアーカイブを運営するにはどのようにしたらよいかなど,大学図書館で実
 務経験のある参加者からの質問が多く,関心の高さをうかがえた。
                              (文責:佐藤悠 大阪市立中央図書館)