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日本図書館研究会研究例会(第333回)報告


日 時:2017年10月23日(月)14:00〜16:00
会 場:近畿大学中央図書館及びビブリオシアター
テーマ:近畿大学中央図書館及びビブリオシアター見学
参加者:8名
 
 標記の日時で,2017年4月に開設された「アカデミックシアター」の中核施設である
「ビブリオシアター」と,従来から設置されている近畿大学中央図書館の見学会を行った。
見学会の内容は以下の通りである。

 まず,近畿大学中央図書館から案内していただいた。同館は,東大阪キャンパスの正面玄
関とも言える西門を入ってすぐにある「旧本館」の3階から5階に設置されており,アクセ
スしやすい場所にあった。建物自体は少し古いもので,館内の様子も一般的な大学図書館と
いった印象を受けたが,全国の地方紙の設置(地方出身の学生が多いため)や月替わりの企
画展示(公募の学生スタッフ等が企画)など,運営には様々な工夫が凝らされていた。

 次に,アカデミックシアター(主にビブリオシアター)を案内していただいた。アカデミ
ックシアターは旧本館(中央図書館)に隣接しており,ビブリオシアターは5つの建物から
なるアカデミックシアターの中心部にある5号館にあたる。蔵書冊数は約7万冊で,「近大
INDEX」という独自分類に基づき,1階の「ノア33」には一般書約3万冊が,2階の「ド
ンデン」にはマンガ約2万2千冊を含む,新書,文庫等が約4万冊配架されている。

 ビブリオシアターのコンセプトは,学生の読書離れに対応できる,従来の大学図書館にな
い新しい考えをもった図書館の創出とのことだった。実際に,シアター内の空間は従来の大
学図書館とは大きく異なる構造で,図書館というよりも,近年都心部で増えているオシャレ
な書店といった装いとなっていた。

 1階の「ノア33」には広々とした空間は少なく,33のテーマごとに書棚と空間が緩や
かに仕切られていた。特定の資料を探す場合には少し苦労しそうだが,思いがけない資料と
の偶然の出会いが起こりそうな空間だった。

 2階の「ドンデン」には32のテーマに分かれた書棚があり,蔵書の中心はマンガとなっ
ていた。マンガのそばには,そのマンガと関係の深い新書や文庫が配置されていた。この配
置は,学生からの関心が高いマンガを足掛かりとして関連する新書や文庫にも手をのばして
もらい,さらには専門書への「知のつながり」を感じ,知の奥へと向かうための「知のどん
でん返し」を起こすことを目指したものとのことだった。

 マンガをこれだけ所蔵している大学図書館は他にはほとんどないと思われる。そのライン
ナップは,現在も連載が続いている人気作から過去の名作までとバラエティーに富んでおり,
学生が講義をそっちのけで熟読してしまうのではないかと思われるほどの充実ぶりだった。
マンガを手にした学生が実際に専門書まで導かれるのか,一定期間が経過した後には,是非
学生の利用分析をしていただきたいところである。

 シアター内には,カフェや24時間使用可能な自習室のほか,様々な形態の座席やソファ
ーがあり,学生を惹きつける居心地のいい空間となっていた。実際に,来館者は非常に多い
とのことで,この見学会が開催される直前の9月末時点で約80万人に達しているとのこと
だった。また,中央図書館を含めた貸出冊数も大きく増えているとのことだった。開館後5
ヶ月ではあるが,入館者や資料の貸出については,すでに明確な成果が出ていると言える。
私も近畿大学の学生だったとしたら,この施設には毎日通うのではないかと思われる。

 ビブリオシアターは,大学図書館の新たな可能性を追求した施設であると考えられる。今
後も,さらに新たな取組みが展開されることを期待したい。

 前日に近畿地方を通過した台風の影響により,近畿大学東大阪キャンパスの講義は全て休
講となっていたが,中央図書館やアカデミックシアターは開館しており,ご対応いただける
との確認がとれたため,見学会も中止とはせずに開催した。今回の見学を実施するにあたり,
台風通過後の慌ただしいタイミングであるにも関わらず丁寧に対応して下さった近畿大学の
皆様に,深く感謝いたします。
                                         (記録文責 大阪府立中央図書館 日置将之)