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日本図書館研究会研究例会(第331回)報告


テーマ:図書館職の記録研究グループ研究成果『歩みをふりかえって 都立図書館の司書として
    −中国,韓国・朝鮮語資料,組合活動を中心に』を語る
発表者:迫田けい子氏(元都立図書館司書)    
日 時:2017年7月29日(土)14:00〜16:30
会 場:大阪市立総合生涯学習センター第4研修室
参加者:14名

 シリーズ「私と図書館」の第7冊目の『歩みをふりかえって』を昨年11月に発行した。
 この日は,この本の著者としての講演だった。

1 この本ができるまで
 定年になる頃から,このグループの深井耀子さんから「私と図書館の記録を書いてね,次はあなたの番
 よ」と何度となく言われ続け,嘱託員が終わったと報告したとたんに発行までの日程表まで送られてき
 た。それでもぐずぐずしていたのに,深井さん・田口瑛子さんお二人からの督促に次ぐ督促では,重い
 腰をあげざるを得なかった,と話した後,団塊の世代の「第二次世界大戦」の受け止め方から,はじめ
 た。

2 図書館に入って
 都立中央図書館を開設するために,30人以上の新人が採用された,その一員となったこと。図書館問
 題研究会の日比谷班は一気に30人以上の構成となり,機関紙『Lib』を発行したと,その当時のガリ
 版刷の現物を示した。日比谷班での「東京の図書館政策 課題と対策」の学習会で,最後に前川恒雄さ
 んをお呼びし,また労働組合の歓迎会で清水正三さんの講演会を聞き,そのたびに,都立中央ができた
 のは,時期尚早だったとの話や,区立や市立図書館とどれだけ連携するかを強く訴えられたこと,また,
 日比谷図書館の歴史を知るべく,先輩の「北村泰子さんと語る会」を何度か開くなどの活発な活動を展
 開した若者の恐さ知らずの時代を話した。

3 都立で働いて
 1974年当時,鶴見良行等が行った「アジア図書館設立運動」があった。中央図書館開館に向けて中
 国語資料が収集されていたが,これをきっかけに,朝鮮語資料が集められることになった。その経過は
 1975年の雑誌『日中』に詳しく掲載されている。著者は78年以後,海外資料収集係で,中国書・
 朝鮮書の担当に何度か関わった。
 都立中央図書館は,主題別閲覧室制度を取ったが,中国語・朝鮮語資料を主題にばらすか,言語別にコ
 ーナーにするかについては,館内で常に論議があったこと,それが,「図書館の多文化サービス」に取
 り組む深井さんとの関わりや,その後の「むすびめの会」での活動につながったとの思いも語った。

4 戦時買上げ事業について
 都立図書館の特別文庫室でも働いたが,関心は,戦時買上げ事業の反町茂雄さんや中田邦造さん,さね
 とうけいしゅうさんなどにあった。今回この本を書いたことから先輩が,中田さんが失脚するきっかけ
 となった組合の「昭和22年1月25日 顛末書」をお任せすると送ってくれたと,現物を示した。敗
 戦後のごたごたの中,海外からの引揚図書館員やたたき上げの職員たちの間の軋轢など,まだまだ調査
 することは沢山あるが,みなもう鬼籍に入っているのが現実である。

5 都立図書館の再編に絡んだ組合の取り組み
 新日比谷図書館を考える会から都立図書館を考える会へ。そして発行された『図書館を創る力』(20
 13)を紹介した。

6 多摩図書館児童青少年資料係にて

 自身が関わった「朝鮮半島の絵本の展示」 『ぷらたなす』58号(2008)や「中国の絵本の展示」
 や,利用者の反応などを紹介した。行政の介入による図書館の対応例として,『羅針盤』(2008)
 刊行後,一番多かった感想が,「文化人」批判への共感だった。
7 あらためて〈本〉〈読書〉〈図書館〉を考える
 童心社の〈日中韓平和絵本〉プロジェクトのこと,資料として『むすびめ2000』74号(2011.
 3)の卞記子さんの「つながっている−昨日・今日・明日」を示したほか,中国を扱ったものとして,
 『赤い大地 黄色い大河 10代の文化大革命』(張安戈著 今人舎 2005)や,今年発行された
 アフリカ・マリ共和国の『アルカイダから古文書を守った図書館員』(ジョシュア・ハマー著 紀伊國
 屋書店 2017)も紹介した。
 (この冊子の刊行と,この報告会を実施できたのは,ひとえに,記録研究グループの存在感とプッシュの
  おかげです。ありがとうございました。)
                                     (文責 迫田けい子)