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日本図書館研究会研究例会(第325回)報告


テーマ:瀬戸内市民図書館「もみわ広場」見学
日 時:2016年12月10日(土)14:00〜15:30
会 場:瀬戸内市民図書館「もみわ広場」
参加者:13名

 標記の日時で,2016年6月1日に開館した瀬戸内市民図書館「もみわ広場」の見学会を行った。
 見学会の内容は以下の通りである。
 
 まず,同館の概要説明と質疑応答の後にバックヤードを案内していただき,最後に開架スペース
 の自由見学を行った。
 
 概要説明では,最初に同館の基本理念に関する説明があった。愛称の「もみわ広場」は,“もちより・
 みつけ・わけあう広場”という基本理念の頭文字をとって公募で名付けられたもので,この理念を実
 現するために以下の指針を定めて活動しているとのことである。
 (1)市民が夢を語り,可能性を広げる広場
 (2)コミュニティづくりに役立つ広場
 (3)子どもの成長を支え,子育てを応援する広場
 (4)高齢者の輝きを大事にする広場
 (5)文化・芸術との出会いを生む広場
 (6)すべての人の居場所としての広場
 (7)瀬戸内の魅力を発見し,発信する広場

 開館準備時には市民によるワークショップを12回開催し,出された意見を参考にして図書館整備の計画
 が立てられている。子どもを対象としたワークショップも開催し,ここで出た意見もグループ学習ができ
 る「チャットルーム」等に活かされている。
 
 開館後は市民図書館を拠点に,各分館,市内の保育園,幼稚園,高齢者施設を巡回する移動図書館により
 全域サービスを展開している。また,市内にある全小中学校の図書館と公共図書館とをオンラインシステ
 ムで結んでどの図書館からも検索や予約が可能になっており,連絡便で資料も運搬している。
 
 学校図書館支援としては,学校司書の研修会をサポートしているほか,「学校図書館と子どもたちの学び」
 と題した学習会を開催している。
 
 郷土資料については,本とモノとを融合的に展示した「せとうち発見の道」を行っている。また,郷土の世
 界的人形師竹田喜之助が制作した糸繰り人形のギャラリーと,人形劇が上演可能なシアターも整備しており,
 アマチュア人形劇団の芝居が月一回程度開催されている。
 
 そのほか,生涯学習の拠点として市民とも活発に連携している。例えば,おはなしボランティアのネットワ
 ーク団体と協働で「おはなし会」や「絵本ライブ」を開催している。また,高校生が小学生の宿題を支援す
 るというユニークな取組みを行っており,大変好評とのことである。
 
 館内の様子は,全体的に明るく開放的な雰囲気となっていた。1階の入口付近にはカフェスペースがあり,
 会話や食事ができるようになっていた。現在は自動販売機が設置されているだけだが,ゆくゆくは有人によ
 る販売等も行いたいとのことである。
 
 カフェスペースの先にサービスカウンターがあり,そこから左に入ると子どもの本のスペースとなっていた。
 スペース入口の柱にはマスキングテープで絵が描かれており,温かい雰囲気に包まれていた。
 
 カウンターの右手後方には暮らしや趣味,文学等に関する本が配置されていた。館内には様々な種類の座席が
 あり,利用者は思い思いの席で読書を楽しんでいた。そのほか,1階には同館が実施している回想法に用いら
 れる古民具(湯たんぽや洗濯板等)や全国の図書館員が推薦した本等が展示されていた。
 
 バックヤードには事務室や書庫のほか,移動図書館「せとうちまーる号」の車庫があった。移動図書館の車体
 には地元の高校生による絵が描かれおり,親しみやすいデザインになっていた。
 
 2階は大きな吹き抜けを半ば囲むような構造で,各所から1階を見下ろせるようになっていた。中高生向けの
 書架や自習室のほか,グループ学習室“チャットルーム”も設けられていた。また,AVコーナーやインターネ
 ットコーナー,一般書の書架のほか,調べ物のカウンターも設置されていた。
 
 図書館南側の壁面には,市民が手作りした3,200枚以上のタイルが貼られていた。この壁面も含め,瀬戸内
 市民図書館が市民と共につくられてきた図書館であることが随所で感じられた。市民の側には,「私たちの図書
 館」という意識を有している人も多いのではないかと考えられる。現時点でも同館は様々な取り組みにチャレン
 ジしているが,今後も市民と手を携えてさらに成長していくものと思われる。
 
 今回の見学を実施するにあたり,ご多忙にも関わらず丁寧に対応して下さった瀬戸内市民図書館の皆様に深く感
 謝いたします。
                                                           (記録文責 大阪府立中央図書館 日置将之)