TOP > 大会・研究会等 > 研究例会 > 2014年度 > / Update: 2014.12.28
日本図書館協会HPの「日本図書館協会の歴史」を,組織運営・図書館思想・図書館事業の面から色分けして125年の歴史を振り返ってみた。 組織運営の骨格は,日本図書館協会は,1892年「日本文庫協会」として,世界3番目のライブラリアン集団として誕生した。第2次世界大戦中に一時期,政府直轄の財団法人になった時以外は,一貫して,社団法人である。会員数は,最大時で,7000人。1973年東京・世田谷区に図書館会館を竣工,日図協の活動拠点が築かれた。1998年東京・中央区に新図書館会館を竣工した。 図書館事業の骨格は,1906年に第1回全国図書館大会,1907年に『図書館雑誌』創刊。1981年国立国会図書館蔵書目録のデータ「JAPAN/MARC」頒布事業開始,1989年に著作権保証処理済ビデオソフトの頒布事業を開始。1997年「JLA図書館情報学テキストシリーズ」刊行開始。2010年に日本図書館協会認定司書事業を開始した。 図書館思想の骨格は,1954年全国図書館大会で「図書館の自由に関する宣言」採択。1963年『中小都市における公共図書館の運営』(中小レポート)・1970年『市民の図書館』発行。1989年に「公立図書館の任務と目標」の公表,文部科学省の「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の改正に伴う取組(2012年)。近年における指定管理者制度。学校図書館司書の問題等。 大雑把にいえば,1980年に栗原体制が始まり,それ以降,収益事業が大きくなる。塩見体制は2000年以降だが,図書館思想に関わる事項は,理事長になる前から同氏の貢献が大きい。 2012年に,公益社団法人移行を目前にして,多額の累積赤字があったことが顕在化した。2012年秋から財政再建へ取り組むことになった。私はそれまで日図協の運営に深い関与をしていなかったが,法人運営経験を買われたか,理事長代行に指名され,この問題に取り組むこととなった。 顕在化した財政問題は,1980年代の相次ぐ収益事業参入や,新図書館会館建築,職員の就労関係規則の改正放置などが重なって起こった。図書館振興中心の理事会運営や事務局体制も問題だった。常務理事会で議論されていたのは主に図書館思想のことであって法人運営については殆ど議論されていなかった。慢性的赤字を短期借入金の繰返しで凌ぐ体質やそれを是とする運営感覚,コンプライアンスの不足があった。赤字に至った分析を行い,2012年10月に理事会で財政再建計画を立て,収益事業は廃止し,執行理事を中心とした責任寄付,徹底した活動経費削減,職員給与の削減等により,何とか2012年度決算で公益認定可能な決算を見た。2013年8月に内閣府に公益法人への移行認定を申請し,12月には内定し,2014年1月21日に登記を行い,新公益社団法人へ移行した。現在は,収益事業は建物の一部の貸与のみである。出版物発行は公益事業としている。 協会の新公益法人移行後のあり方は,『図書館雑誌』の記事(注1)を見てほしい。
日本図書館協会の歴史を振り返っていく中で,組織運営の難しさが見えて来るお話だった。誰かを悪者にするのではない,率直なお話を伺うことができ,日本図書館協会の今後のさまざまな課題にむけて一緒に取り組んでいこうという気持ちになった。
(注1)森茜「挑戦する日本図書館協会(特集:公益社団法人日本図書館協会スタート)」『図書館雑誌』108(4),p.249―253,2014.4.
(文責:河西聖子 精華町立図書館)