TOP > 大会・研究会等 > 研究例会 > 2007年度 > / Update: 2008.5.17
現在の大学等研究機関では,継続的な学術雑誌の価格高騰により,必要な雑誌を自由に購読して読めなくなる傾向にある。そこで,「オープンアクセス」(無料公開)を目指す動きが起き、その延長線上に,機関構成員の教育研究成果を広く発信する「機関リポジトリ」の考えが生まれてきた。
日本国内でも,平成17年度から,NII(国立情報学研究所)が「最先端学術情報基盤整備(CSI)」の一環として,機関リポジトリ構築のため「次世代学術コンテンツ基盤共同構築事業」として,全国の大学を対象に委託事業の公募を行っている。大阪教育大学も平成18年度に事業委託を受け、「大阪教育大学リポジトリ」を2007年11月に正式公開した(8月から試験公開)。正式公開にいたるまで,大きく4ステップに分けることができると思われるので,それを順に具体的に紹介する。
まず,第1段階として, NII指定の「業務計画書」を作成して委託事業に応募した。結果,2006年7月に採択通知を受け,8月に委託契約にいたった。
次に,第2段階として,リポジトリ構築のための準備段階として,広島大学様と三重大学様に視察出張し,コンテンツ収集方法,著者・出版社からのリポジトリ登載許諾確認方法,コンテンツのスキャン・登載実習,リポジトリ企画実習を,実務に携わりながら学んだ。また,そこで学んだ知識や仕様書作成方法を基に,リポジトリのシステム導入を行い,初期データを投入した。リポジトリのシステムは,マサチューセッツ工科大学(MIT)図書館とヒューレット・パッカード研究所が共同で開発した,オープンソースシステム「DSpace」である。リポジトリのシステムには様々な種類があるが,DSpaceは,NIIのメタデータハーベスティングに対応でき,Open-URLにも対応しており,研究者総覧との連携が可能で,またリポジトリの画面レイアウトが容易に変更できるという長所があり,システム導入後に大幅なカスタマイズをしていかなくても良いという利点を評価し,選択した。
DSpace導入後,NIIから本学紀要データの提供を受け,初期リポジトリデータとして投入し,ロゴ・デザイン・ニュースを入力して,リポジトリの初期システムが構築された。
第3段階として,2007年8月の試験公開に向けて,教員の個別訪問を行い,ポスター掲示・ちらしの配布,イントラネット,情報処理センターニュースでのお知らせ,GP(文部科学省の支援を受ける大学教育改革のプログラム)「著作権セミナー」と連携しての広報を行った。ポスター・ちらしでは,”学内の教育研究成果を「大阪教育大学リポジトリ」から世界に発信してみませんか。”と訴えた。
教員の個別訪問に関しては,かねてから何らかのつながりのあった教員や,リポジトリに関心をお持ちの教員に個別にコンタクトをとった。訪問の際,学内の研究者総覧から当該教員の論文データを抽出し,出版社・学協会の著作権ポリシー調査を行って,各教員の論文リストを作成した。また,リポジトリへの登載同意書を作成し,確実に署名を得るようにもした。なお,そこで各教員から得られた意見をまとめて,今後の展開の参考にした。例えば、以下のような意見・質問があった。
リポジトリへのコンテンツ登載に関しては,DSpaceの仕様である,「コミュニティ&コレクション」に,全体構成図をあてはめた。また、メタデータは,NIIの基準等を十分考慮して作成することとした。リポジトリに登載するPDFファイルは,実際の画質を見ながら,教員との相談の上,画素数を決めた。また,勝手に編集されたり,悪用されたりしないように,セキュリティ設定を施した。
そして,第4段階として,2007年8月に試験公開,2007年11月に正式公開を行った。正式公開後,「大阪教育大学リポジトリ」講座説明会を講座単位で9回約60教員に向けて,開催した。そこで,出された意見を以下にまとめる(前述の教員個別訪問時との重複分は割愛した)。
2008年3月時点でのコンテンツ数は、紀要論文297件、学術雑誌掲載論文152件、学内刊行物掲載論文160件、プレゼン資料13件、教材39件、科研費報告書・修士論文・博士論文各1件、となっている。紀要コンテンツ以外の約370件については,根気強く,各教員にリポジトリ紹介・説明を行い,入手した。
最後に,今後の課題として,「大阪教育大学」らしさのあるリポジトリに育てていきたいと思う。そのためには,リポジトリ運用指針・構築方針の策定,また,より多くの学内刊行物の登載,修士論文・科研費報告書の登載,研究者総覧との連携,本学OPACとの連携を考えている。
報告後の質疑応答の主なものを列挙する。
(記録文責 上野恵)