TOP > 大会・研究会等 > 研究例会 > 2007年度 > / Update: 2008.1.9
2007年9月,図書館関係者ら26人による「フィンランドの図書館を巡る旅」が催行され,13館ほどの図書館訪問がおこなわれた。この例会報告はそのときの様子をもとに,フィンランドの公共図書館の設置形態,運営,サービス内容等の特色を紹介したものである。
フィンランドの人口は521万人(面積約34万u),行政組織は,クンタと呼ばれる基礎自治体(市町村)があり,その数432である。クンタは憲法によって高い自律性を与えられており,最も重要なサービスとして,教育サービス,社会福祉・保健サービス,インフラ維持の3点の業務を行っている。次に,マークンタ(地方区)と呼ばれる市町村連合が全国に20ある。ここでは,病院,教育訓練機関,公共図書館等の広域業務を行っている。さらに,全国を6つに分けた中央政府のラーニと呼ばれる行政区が設けられており,これらによって行政が行われていると言うことである。
フィンランドでは,すべての国民を対象とした効果的な図書館サービスが実施されており,その結果,貸出冊数は国民一人あたり約20点/年となっている。また,情報インフラの整備等をはかるとともに,インターネットバス(「移動ICT教室」)に象徴される高齢者向けICTサービスなども、充実した取り組みがおこなわれている。また,図書館法,図書館令をもとにした「図書館発展計画2006-2010」を実施するなどの取り組みが行われている。国は図書館サービスに必要な財政措置をおこない,自治体は住民に責任をもってサービスを実施するという考え方があると言うことである。
こうした事情を背景にして,具体的に4つの図書館の紹介がおこなわれた。雷鳥をモチーフとして建設されたタンペレ市の特徴的な図書館,ここはムーミン谷博物館が併設されていることでも知られている。ヘルシンキ近郊にあり,巨大な商業施設の中核としてつくられたエスポー市セルロー図書館,スウエーデン統治時代の首都トウルクの図書館,小学校の敷地内にあるリマッティラ市立図書館である。
これらの図書館についての報告のあと,質疑がおこなわれたが,日本との事情の違い,行政的な対応のへだたり等もあり,学ぶところ,感心するところ,参考になるところなどなど,多々見せられた例会であった。
(文責:寒川登 大阪教育大学図書館)