TOP > 大会・研究会等 > 研究例会 > 2007年度 > / Update: 2008.3.21

日本図書館研究会研究例会(第248回)報告


日時:
2007年10月18日(木) 19:00〜21:00
会場:
大阪市立弁天町市民学習センター
発表者 :
平井 尊士(兵庫大学)
テーマ :
メディアの活用が児童の学習効果と教師の指導方法に及ぼす効果の一考察
参加者:
8名

 今回は、特にマルチメディアの活用という視点から見た、学校現場の状況を踏まえた報告であった。

 平井氏は、メディア教育と学校図書館について、特にLOM(Learning Object Metadata)という形の支援に主眼を置かれて研究を進められてきた。そして、先行研究の主流が、アンケート調査に頼っていると判断された上で、その現状に対して、やはり現場に飛び込むという決意のもとに、学校現場に実際に入り教員と種々の共同作業を進めた上で見えてきた知見が今回の報告の内容である。

 上記の背景の説明の後、学校現場に入った体験談から始められた。特に、小学校での算数の授業の支援を行った実例ということで、まず、実際に学校現場で使われている算数の教科書と、それに対応した教員用の指導書(教科書で教えるために教科書会社が用意している教師用の冊子)が回覧された。

 次に、実際に平井氏が作成された算数のマルチメディア教材の実演があった。それは、教師の説明・発問と連動しながら画面に提示する動画教材で、内容は、直方体の体積や長方形の面積の公式を感得させることを目的とするものであった。

 その上で、なぜ学校図書館的な研究が出発点なのにマルチメディア教材の作成に至ったのか、という説明があった。まずは、どうしても主要教科に注力せざるを得ない学校現場の実情が指摘された。また、学校現場の教員の負担が増大傾向にあつことの帰結として、疲弊した教員が増大しつつあり、なかなかメディアのことまで手が回りにくい状態であることも紹介された。 そして、このような状況下での「現場の要望」を優先することから、教材作成に至った経緯の説明があった。

 関連して、現場から見た学校図書館の現状が語られた。氏が調査に入られたA市においては、司書教諭はクラス担任を持っている教諭が兼担しているうえ学校司書は皆無であり、その結果として図書室は通常鍵がかかりっぱなしで、各教室に本を配置して図書館的な機能も担わせようとしている実情が報告された。

 さて、このような実情に答える形で始まったマルチメディア教材の教育効果についても、アンケートに基づく報告があったが、図書館とはかけ離れた内容でありまた詳細は別途報告されるとのことなので、内容はここでは省略する。

 更に、このような学校現場(特に公立)に飛び込んで実証授業をする際のノウハウの一端も公開された。それは下記の様なものである:

以上の様な内容を受けて、出席者全員で質疑応答・他の現場状況の紹介、討議が行われた。

 その中での、特に図書館界の視点からの総括としては、普通教室を図書館化せざるを得ない現状を踏まえた支援が求められているという現実に尽きる。
さて、現場からの要望としては下記の様な項目が挙げられた:

これらの要望は、学校図書館を中心に捉えてきた今までの知見とは相違する点もあるが、このような要望に地道に答えることが学校現場において、図書館活動を浸透させる、迂遠に見えて正統的な道かも知れないと感じた。

 なお、本研究内容は、更に要点を整理した上で研究大会で発表し、その内容を再度本誌に寄稿する予定である。

(文責:藤間真 桃山学院大学)