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日本図書館研究会研究例会(第245回)報告


日時:
2007年6月29日(金) 19:00〜21:00
会場:
大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)
発表者 :
高橋和子(元日本生命保険相互会社附属文研図書館)
テーマ :
館種を越えたネットワークがめざすもの
参加者:
10名

 高橋和子さんは2007年3月、長年勤務なさった日本生命保険相互会社附属文研図書館を退職された。当例会では、在職中から職場や館種を越えて呼びかけ築いてこられたネットワークについて、構築の経緯や成果、ネットワークによって得られたものなどについて語っていただいた。その概要を報告する。

1.様々なネットワーク活動について

 ネットワーク活動のスタートは、1986年から10年間続いた専門図書館関西地区協議会の「女性スタッフ委員会」である。このとき既に入社を20年経過しており、それまでは研究会などに単に参加するのみで、自分で何かを能動的にするということがなかった。人と情報をつなぐことが図書館員の役割であるは比較的早くから自覚していたが、“人と人をつなぐ”役割は果たせていなかったことにようやく気付いた。この委員会活動の最初の頃は、講演会などを企画するにも自分には提案する材料がなかった。併行して他の会合にもかかわるようになってはじめて、専図協メンバーをもサポートできるようになった。

 1995年には「中之島交流会」を発足させた。誰でも参加できる会合や勉強会の場を仕事時間外に設けたいという、自らの体験からのニーズを実現する場であった。職場では人前で発表する機会の少ない方々に事例などを報告してもらうようにし、参加者相互のスキルアップをこころがけた。専門図書館員だけではなく、公共図書館員や大学図書館員の参加も多く、館種を越えたネットワークが求められていることを実感した。

 同じ頃、記録管理学会に入会してその関西の部会ともいえる「わいがや会」などにも参加するようになった。1996年には情報科学技術協会(INFOSTA)西日本委員会委員になり、こちらは現在も継続している。ここでは、専門図書館員と技術系情報室部員とのパイプ役としての役割が得られた。また、1997年にはサーチャー試験合格者による西日本の集まりといえる「インフォ・スペシャリスト交流会」の幹事も引き受け、ますます多くの人々との深い付き合いをできるようになっていき、情報部門の人々のニーズを感じられることとなった。

 最近では2005年に「情報活動研究会」(INFOMATES)を立ち上げ、事務局を担っている。この会は、情報担当者が顔を合わせ、情報活動に関するテーマについて情報交換をしながら、専門能力の向上と人的ネットワークづくりを目的としている。開催した研究会はいずれも定員オーバーで、現場スタッフのネットワークへのニーズの高さがうかがえる。これからも後継者育成を目指して、活動を続けていきたいと考えている。

2.ネットワークづくりや参画によって得られたもの

 多くの研究会に参加し、人脈をつくり、また自ら話題提供することで得られたものは下記の5つだと思う。もちろん、人脈が一番の宝であることはいうまでもない。

(1)コミュニケーション力:
たくさんの会合に参加することによって培われたスキルである。コミュニケーションが苦手という意識を払拭することが自分の殻を破るきっかけとなり、それは仕事上で求められる発想の広がりにつながった。
(2)プレゼンテーション力:
コミュニケーション力のアップによってプレゼンテーション力が身につき、それが組織内での交渉力獲得へとつながった。
(3)交渉力:
図書館業務を遂行するために必要な組織内での説明にあたっては、図書館用語をそのまま用いるのではなく、一般的な表現に言い換えるようにした。上司への提案の際には、それが自分の考えであるということをあまり前面に出さず、会合で聴いた講師の意見として述べるなど、物事がスムーズに運ぶための工夫をした。
(4)後継者育成:
自らが話題提供者として話したことが回りまわって職場の後輩に届くことも期待でき、間接的ではあるがネットワークに参加することが後継者育成にもつながっていると考えている。
(5)仕事の継続性:
1〜4によって、結果的には、組織内で図書館専門職が担うべき仕事の継続性が実現する。これが図書館として最も大切なことである。

(記録文責:木下みゆき)