TOP > 大会・研究会等 > 研究例会 > 2007年度 > / Update: 2007.7.11
発表内容による詳細は、田井氏が論文として発表される予定であるので、そちらに譲り、ここでは簡単なまとめと私自身の感想を記す。
話の内容は大きく分けると、@北海道の北広島市、石狩市、置戸町で行われた「選書ツアー」の実態はどのようなものであったか、A「選書ツアー論議」はどこがおかしいのか、の2点であった。要点は次の通り。
「選書ツアー」は北広島市と石狩市では新館建設前後の時期に軽いイベントとして計画されて実施されたが、北広島市では3年で一般市民からの公募は中止、石狩市では4年でイベント自体が中止された。理由はいずれも応募者が減少したためだった。
置戸町では新館建設準備中に1度実施されただけである。これについては、澤田正春氏が地元の新聞「置戸タイムス」に批判の投稿をし、それに対して町長が回答するというやりとりが5回に渡って掲載された。澤田氏の投稿には現実の選書ツアーについての基本的な問題が指摘されているが、後の「選書ツアー論議」は『みんなの図書館』に掲載された細谷洋子氏の主張から始まった。細谷氏は「選書ツアー」に図書館側が抱いていた軽いイベントという意図を超えた過剰な意味付けをし、図書館員等も事実の分析よりも細谷氏の主義主張に付き合う形で「図書館員の専門性」を論じたため、抽象的な「選書ツアー論議」が展開された。細谷氏の文章が発表された時点で、すでに北広島市では一般公募のツアーは中止されており、置戸町でも中止、石狩市でも2年後には中止されたが、このような事実は「選書ツアー論議」には反映されなかった。
実際の「選書ツアー」にはほとんど成果がなくて継続もしなかったのに、「選書ツアー論議」は現在もなお続き、一人歩きをしている。現在も実施されている数少ない事例の一つである山中湖情報創造館では、1日の選書ツアーで、1年間の購入図書の5分の1近い冊数を一度に選んだりしている。このような実態をきちんと見た上で論議することの大切さを改めて思い知らされた発表であった。参加者は公立図書館関係者が多かったが、専門図書館、大学図書館関係者の参加もあった。
(記録文責:村林麻紀)