TOP > 大会・研究会等 > 研究例会 > 2004年度 > / Update: 2004.10.31
学校図書館に司書が未配置の自治体においても、「総合的な学習の時間(以下総合学習)」実施に伴い、公共図書館の利用が急増するなど新たな課題が生じている。その中で小・中学校の先生方向けに『図書館利用案内』を作成配布し、様々な働きかけを実施している公共図書館と、学校の実態を調査し、学校図書館と公共図書館の連携について考察する。
尚、この報告は学校図書館研究グループの研究活動の一環である。
1998年秋、授業時間内に児童が来館し調べ学習を実施している姿を見かけ、「総合学習」が図書館業務に多大な影響を及ぼすものと実際に認識した。図書館は「総合学習」の試行に個々に対応しながら本格実施に備えていこうと考えていたが、1999年になり試行する学校が1校から8校に増え、現場は大混乱が続いた。
試行を受けての問題点を整理し、学校や指導主事、教育委員会指導課と情報交換を進め、全校が「総合学習」の試行を開始する2000年度に向け、図書館として学校向けに冊子を作成し対応することにした。児童・生徒向けのガイドが欲しいと要望があったが、学校や教員の理解を求めることが最優先と考え、児童・生徒向けの情報を盛り込んだ教員向け冊子を作成している。
「学校(図書館)との連携 −公共図書館に何ができるか?−」をテーマにした研究活動から生まれたマニュアル。
公共図書館が実施している学校(図書館)へのサービス内容を整理し、網羅的に紹介する公共図書館向けマニュアルと、学校の教員に図書館を理解してもらうための利用案内を、各図書館でアレンジしてすぐに使えるような内容で作成している。
学校・教育委員会指導部・公共図書館の三者で「連携研究会」を組織し、3年間の連携実践を踏まえて事業内容を整理して利用案内を作成している。
また、教員の図書館見学や学校図書館主任会の開催など、教員の啓蒙を視野に入れた実践を実施しており、公共図書館を上手に使ってもらおうという意図が強く現れている。
教員の研究会(小学校教育研究会学校図書館部会)が充実しているところであり、公共図書館との連携より、学校間のネットワークの方がよく利用されている。
小教研で購入図書や授業での利用を研究し、複本での購入や授業への対応など、学校図書館で対応してきた経過がある。「総合学習」が発展するために、今後、学校図書館がどう変わり、公共図書館がどんな役割を求められるのかが課題である。
学校図書館がほとんど機能していない状況の下で、「総合学習」がはじまっているが、学校図書館と公共図書館の双方からの支援があれば、「総合学習」本来の目的を達成するために大いに力になると思われる。また、両者の活動を様々な視点から支援するために、教育委員会などの行政の役割は非常に重要になっている。
学校と公共図書館が連携をはかり、どちらもがその機能を十分に発揮するためには、学校図書館には図書館活動を支える「人」を配置することが重要である。
(文責:谷嶋正彦)