TOP > 大会・研究会等 > 研究例会 > 2003年度 > / Update: 2003.7

日本図書館研究会研究例会報告


日 時:
6月19日(木)13時30分〜17時
会 場:
京都大学附属図書館3階AVホール

テーマ:
「VASCODA:情報のためのポータルサイト」
発表者:
ウーヴェ・ローゼマン(ハノーファー大学図書館・技術情報図書館館長)

テーマ:
「国立国会図書館の電子図書館サービス」
発表者:
原田久義(国立国会図書館関西館)

司 会:
川崎良孝(京都大学大学院教育学研究科)
通 訳:
荒西麻記子(京都ドイツ文化センター)

 今回の研究例会は「ドイツと日本におけるデジタル図書館」との題目で、ハノーファー大学図書館・技術情報図書館館長のウーヴェ・ローゼマン(Uwe Rosemann)氏と国立国会図書館関西館の原田久義氏の発表であった。原田氏は国会図書館の電子図書館サービスを紹介し、今後の課題を示した。例えば前者では、新しいサービス「近代デジタルライブラリー」、「WARP」、「Dnavi」、それに「電子展示会」について、具体的に実例を示して紹介した。
 この報告ではローゼマンの発表を中心に報告する。東京ドイツ文化センターのイエンス・ボイエ館長の紹介ののち、ローゼマンは以下の順序で発表した。
  1. はじめに
  2. Vascodaを支援している助成機関および諸団体
  3. 協力機関
  4. 協力と未来像
 以下、各項目での骨子をしておく。

1.はじめに

2003年8月にベルリンで開かれる国際図書館連盟(IFLA)年次大会の席で、学術情報のための新しいポータルVascodaがインターネットに登場する。Vascodaは、自然科学、技術、医学から精神科学、社会学にいたるあらゆる学問分野のための中心的な出発点になるものとして構想されている。このVascodaの主たる目標は、質の高い情報へのアクセスを容易にすることにあり、そこでは単にインターネット上の情報源のみならず、あらゆる種類の資料へのアクセスを可能にする。そのことによって、利用者に信頼できる情報を確実に提供できるようにしようとしている。

2.Vascodaを支援している助成機関および諸団体

こうした試みを財政的には連邦教育研究省(BMBF)とドイツ研究協会(DFG)が支援している。これは複数のポータルサイトを競合させるよりも協働を意識しての措置である。40を越えるドイツの機関が、世界中にある提携機関とともに利用者に学術情報を提供するためのワン−ストップ−ショップ(One-Stop-Shop)を構築するために協力している。そうした協力・提携機関は、図書館、専門情報センターを中心に、質の高い学術情報提供機関である。主な対象となる人は、高等教育機関、大企業、産業界の研究者で、質の高い学術情報に関心を寄せているすべての人びとである。

3.協力機関

ここでは「電子雑誌図書館」、「情報ネットワーク」、「仮想専門図書館」に分けて報告した。例えば「電子雑誌図書館」(EZB)はレーゲンスブルグ大学図書館のサービスの1つで、ドイツの約200の図書館、ヨーロッパ、アメリカの図書館が参加している。「電子雑誌図書館」は図書館の自主管理組織で、電子雑誌の認可の管理も行っている。利用者は、希望する雑誌を無料で閲覧できるのか、どの機関が特定の雑誌の版権を有しているのか、さらに閲覧にあたっての利用条件が即座にわかるようになっている。また「仮想専門図書館」は、それぞれの専門分野にとって重要な情報や資料へのアクセスを容易にし、所蔵の異なる資料の検索やアクセスは、「仮想専門図書館」に統合される。検索対象には電子資料と印刷資料の両方を含み、内容が重要であれば、いかなる形態の資料でも取り上げる。

4.協力と未来像

Vascodaは、個々の資料提供にかかわる地方、地域、国の認可によってのみ制限をうけるものの、世界中どこからも無料で利用できる。質の高い情報を準備して長期間にわたって保存するには、多大な作業と費用が必要で、費用を節約させるには、仕事を分散させるべきである。大規模なプロジェクトを長期間発展させていくためには国内および国際的な協力が欠かせない。

最後に国際的な図書館文献提供システムのsubitoはVascodaの1つの部分になると報告した。(文責:川崎良孝)

p.s この例会は東京および京都ドイツ文化センター、京都大学附属図書館、近畿地区国公立大学図書館協議会、京都大学大学院教育学研究科生涯教育学講座の共催事業で、約45名が参加した。