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《論文抄録》
『図書館界』72巻1号 (May, 2020)

雇用のための要件か思想の自由への侵害か:忠誠審査に関する決議(1948,1949,1950年)

川崎 良孝

 戦後冷戦期の1948年6月1日にアメリカ図書館協会は『図書館の権利宣言』を満場一致で採択し,資料への検閲への基本原則を定めた。同日には『図書館における忠誠審査に抗議する決議』も採択された。これは図書館員への検閲(忠誠審査)にたいする基本的姿勢を定めるものであった。しかし後者は採択されたものの,連邦図書館員を中心に強い反対があった。この決議は1949年に修正され,さらに1950年になって妥協による最終決議が採択された。本稿は,この採択過程を追求することで,忠誠審査にたいして雇用のための要件とみなすグループと思想の自由への侵害とみなすグループがあり,双方が妥協せざるを得なかった経緯を探求している。

(かわさき よしたか 京都大学名誉教授)