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日本図書館研究会評議員会報告

日 時:2015年6月7日(日)13時30分〜16時30分
場 所:京都大学文学部新館第1講義室
出席者:
《評議員》
北海道:佐々木孝一 東北:新出
関東:三浦太郎,呑海沙織,石川敬史,芦川 肇,藤倉恵一
東海:立花明彦
近畿:川崎千加,原田隆史,脇坂さおり,石橋進一,渡邉斉志,村上泰子,佐藤毅彦,田口瑛子
中国:嶋田学,杉野築
四国:松村信子
九州:永利和則,山口真也(以上21名)
《理事長》 前田章夫
《事務局長》松井純子
《理 事》 志保田務,南 亮一,前川敦子,高鍬裕樹,木下みゆき,山本昭和,常世田良,
      赤澤久弥,岸本岳文,日置将之
《監 事》 伊藤昭治,西村一夫,深井耀子
《事務局》 飯田寿美,松井宏
議 題:案件1 2015−2016年度役員選挙結果報告
    案件2 2014年度事業報告
    案件3 2014年度決算報告
    案件4 2014年度会計監査報告
    案件5 2015年度事業計画案の提案
    案件6 2015年度予算案の提案
議 長:渡邉斉志

審議の概要
 はじめに評議員の出席状況と会の成立要件の確認を行った。評議員定数25名中,出席21名,
 欠席4名(委任状提出者4名)。会の成立要件である過半数を超えており,会が成立してい
 ることを宣言。前田章夫・新理事長の挨拶のあと,議長に渡邉斉志氏を選出し,審議を開
 始した。概要は次のとおり。

《審議》
案件1 2015−2016年度役員選挙結果報告(説明者:事務局長)
 選挙管理委員長が2014年度末をもって退任されたため,事務局長が『界』67巻1号
 (2015年5月)p.36−37に掲載の「2015−2016年度役員選挙結果」にもとづき説明・報告。
 投票率は昨年並み。今回の選挙でも再投票や繰り上げ当選の措置がとられた。合わせて選
 出理事会,通信評議員会の結果,および理事の役割分担が報告された。意見・質疑等はな
 かった。
案件2 2014年度事業報告(説明者:事務局長)
 会員の動態は,個人会員入会35名,退会53名,団体会員入会なし,退会12件。2014年度末
 の個人会員数752名(2013年度末770名),団体396機関(同408)。いずれも昨年より減少
 しており,厳しい状況である。
 主な活動として『図書館界』66巻1号〜6号の発行,第56回研究大会,第10回国際図書館学
 セミナー,研究例会(年間7回),ブロックセミナー(以下,BS)の開催,研究グループ
 助成,図書館研究奨励賞の授与。
案件3 2014年度決算報告(説明者:事務局長)
 『界』同号p.32−33に掲載の内容にもとづき,一般会計・特別会計・第2特別会計決算に
 ついて説明・報告が行われた。
案件4 2014年度会計監査報告(説明者:西村監事)
 『界』同号p.33に掲載の内容について報告された。

《質疑と意見》※○評は評議員,○理は理事
 案件2〜4について一括して質疑を行った。
○評 BSは会員獲得にも有効と思うが,九州BS参加者で日図研に入会された方はおられたか。
○理 BSでは勧誘や入会案内の配布を行っている。最近,佐賀県内の公立図書館の司書が2名
 入会されたのが該当すると思われる。
○評 決算報告で,『界』の刊行費が予算を下回っているのは,単純に節約できてよいという
 わけではない。雑誌の刊行は会員にとって重要で,論文の減少や研究活動が不活発という
 理由であれば問題である。理由を分析されていれば教えてほしい。
○理 単純には,書評を少し削るなどしてページ数が少なくなった。研究活動については十分
 フォローするよう努力し,多くの投稿を得てきちんと査読し掲載するようにしている。
 ご指摘は承る。
《採決》
 案件2,案件3,案件4のいずれの案件も,出席評議員全員の賛成により承認された。

《審議》
案件5 2015年度事業計画案の提案(説明者:事務局長,赤澤理事)
 『界』同号p.34に掲載の内容について,事務局長が説明。また,赤澤理事が『界』オー
 プンアクセスのNII‐ELSからJ‐STAGEへの移行について説明。
案件6 2015年度予算案の提案(説明者:事務局長)
 『界』同号p.34−35に掲載の内容にもとづき,一般会計・特別会計・第2特別会計予算案
 を説明。
《質疑と意見》※○評は評議員,○理は理事,○議は議長
 案件5と案件6について一括して質疑を行った。
○評 事業計画案について質問したい。図書館学セミナーと研究大会の日程が具体的に固まっ
 ていたら教えてほしい。もう1つ,昨年度のワークショップは公共図書館関係のテーマだ
 ったが,今年度のテーマはどういうものを想定されているか。
○理 セミナーの日程は決定している。10月24日(土),大阪のドーンセンターで開催,テー
 マは著作権に関する動向である。研究大会は未定だが,2016年2月中旬〜3月頃に京都市内
 で開催予定である。
 ワークショップは,今年度は学校図書館を取り上げる。『界』66巻6号掲載の塩見昇氏の
 論稿をもとに,8月30日(日),神戸の灘中学高校にて開催。『界』67巻2号に案内を掲載
 する。
○評 NII‐ELSからJ‐STAGEへの移行について,刊行後1年間は非公開にしたいとのこと。会費
 収入への影響が想定されるということだが,あまり影響がないのであれば,完全オープンア
 クセスにして,多くの人に見てもらう方が効果的と思う。
 もう1つ,予算案の会員獲得のための組織強化費が昨年と同額でよいか。増額は難しいのか。
○理 オープンアクセスにした場合の影響,会員減少の判断は悩ましい。また課金を当研究会で
 行う必要があるが,それは困難である。理事会で検討する。
○理 学会によって特徴があり,研究者中心の学会だと完全オープンアクセスにしても減らない
 が,日図研のような団体は,完全オープンアクセスにすると団体会員が減るのではと危惧し
 ている。
○理 組織強化費について,会員を増やすのは金額の問題ではなく,いかに我々が努力するかと
 いうこと。予算の要不要にかかわらず,評議員の皆さんから,会員の獲得方法について,ご
 提案いただきたい。
○議 すぐに提案というのは難しい。後半の「意見交換」で自由に意見を出していただきたい。
○評 一般会計予算の支出で,2014年度は国際交流費の執行がなかった。今年度も予算化してい
 るが,具体的にどんな使い方を考えているのか。
○理 基本的には,上海図書館との交流が続いている。それ以外の地域や団体との交流ができれ
 ばと思うが,具体的には特にない。理事会で検討したい。
《採決》
 案件5,案件6のいずれの案件も,出席評議員全員の賛成により承認された。これをもって議
 長解任。

《意見交換その他》
 休憩後,評議員による意見交換を行った。以下に主な意見のみ,要点を記した。
○評 北海道地区の概況について。函館市が指定管理者を導入。函館,釧路市,苫小牧市など名
 だたる図書館がTRCに。釧路,北見市は駅前に大型の新館を建設。札幌市中央図書館に有資
 格館長。町村部の図書館未設置が解消に向かっている。恵庭市など学校司書の配置が進んで
 いるが,専任正規ではない。ベテラン司書の退職が続き,図書館の現場と図書館学教育の関
 係が途絶えてしまう状況に。
○評 沖縄の状況について。海に囲まれているため,他府県の変化が伝わりにくい。指定管理者
 もわずかで,2つの小規模自治体でNPOが運営する程度。
 例年,3月頃に新卒者の司書採用の連絡が入る。どこの自治体も司書を募集。特に学校司書
 の募集が多いが,学生は公共を希望。非正規司書の給与は市町村で11〜12万円,県立高校だ
 と約15万円(フルタイム)。民間企業のほうが待遇がよいため,そちらに流れてしまう。他
 県の雇用条件はどうか。
○評 日図研は近畿中心の団体なので,東北ブロックの会員だけで活動するのは難しい。東北は
 貸出密度が全国と比べて低く,正規職員も少ない。公共では図問研会員が宮城県中心にいて,
 人的つながりもある。大学は東北大学が中心。それらとつながれば,日図研の活動も広げら
 れるのでは。
 震災後,各地で図書館の新築・改築が進んでいるが未完成。未設置自治体も多い。名取市,
 気仙沼市は直営を予定,指定管理は多賀城市がCCC,鹿角市がリブネットだが,他はあまりない。
 福島県は震災関係の補修が終わったが,警戒区域の図書館は立ち入れないので,まだこれから。
 来年警戒区域解除になる浪江町,南相馬市などは開館準備中。だが,規制解除されても住民が
 戻ってくるわけではない。
○評 福岡の状況について。福岡市が指定管理を導入し,余った人員を学校図書館支援センター
 の運営に充てる。北九州市は,子ども読書活動推進条例で,拠点施設として子ども図書館を
 設置し,学校図書館支援センター機能を持たせると明記。福智町で,元・小布施町立図書館
 長の花井さんをアドバイザーに新図書館を準備中。長崎県立が大村市に移転。大分県内もい
 くつか新館。九州地区の非正規職員交流会「きゅうひこう」を7月に長崎で開催。
 文科省が,国の政策に基づき「インフラ長寿命化計画(行動計画)」を策定。公立学校や図
 書館等の公共施設を対象に,各自治体が長寿命化のための管理計画を策定する。行動計画は
 今年度中。交付金措置がある。これに伴い,新地方公会計制度の導入も求められている。公
 共施設を固定資産税の評価対象にするもの。地方交付税への影響があると思われる。
○評 徳島県内市町村の議員が武雄市図書館に視察に行き,議員だよりに「よかった」と書かれ
 ているのを危惧。司書歴20年のあと5年,役所を行き来する。行政のわかる司書が窓口にいる
 ことで利用者の信頼が得られる。人事交流がプラスになる。福祉課では,障害者総合支援法
 にもとづき,様々なサービスを用意。障害者に図書館を使ってもらおうと紹介するが,図書
 館側から拒否反応があることも。近年知的障害者が増加。障害者手帳の取得が困難なため自
 立支援サービスを提供。図書館利用が多い。福祉課に来て障害者サービスが分かった。
○評 岡山の図書館の状況について。高梁市,玉野市,瀬戸内市が新館。高梁市はCCCによる指
 定管理。玉野市は駅前商業施設に移転,指定管理。瀬戸内市のみ公設公営。武内市長が
 『出版ニュース』に執筆(2015年4月中旬号)。岡山県立図書館の活動が活発で,10年連続
 日本一。しかし市町村の図書館は非正規率が高く,有資格者館長も限られている。瀬戸内市
 ではフルタイム217万円。
○評 近くの会員に要望を聞いたところ,教員や学生は『界』が重要,コンスタントに刊行され
 てよい。筑波研究例会により,筑波大の学生に発表の機会があるのもありがたい。論文投稿
 後の状況を編集委員会に問い合わせても返事がないときがある。
 会員獲得の方策について。他団体で支部活動が立ち行かなくなった時,個人個人に声かけし
 て若い会員が増え,企画も充実させることができた。最近,大学院で学ぶ大学図書館員が増
 えているが,論文の書き方がわからないという。日図研は研究者だけの団体でないというと
 「ぜひ入ってみたい」と。九州在住のある研究者は日図研を関西の人対象の学会と思い,
 「そうではない」というと入会した。
○理 投稿論文の状況については,早急に対応する。
○評 埼玉県の状況について。学校図書館は専任司書が多い。県立図書館が中心となって県民と
 図書館の集いを毎年開催。2014年で8回目。大学図書館,公共図書館も参加。県立浦和が昨年
 度末で閉館し,久喜と熊谷の2館体制に。新図書館構想を検討中。鶴ヶ島市が来年指定管理を
 導入。富士見市は指定管理を更新(5年経過)。桶川市が丸善と連携し,図書館と書店をつく
 る計画。運営はTRCである。
○評 私大図書館の状況について。私大図協は,全国の私大9割が加盟。東地区・西地区など地区
 部会があり,図書館員の研究の場として研究分科会があるが,ベテラン図書館員の退職で何か
 を生み出す力が低下している。私大では図書館外に異動になると戻ることがなく,経験のない
 人が図書館員になっても3年で異動する。専門知識が蓄積されず,勉強する意欲もなくなる。
 意識を強く持ちたい。
 JLA分類委員を務めている。NDC10版を刊行。MARCには未採録。要望をお待ちしている。
○評 日図研の事業計画で障害者会員の話があった。私が書いた『界』67巻1号のエコーでいかに
 向上したか分かると思う。障害者サービスは,来年4月から障害者差別解消法が施行され,対
 応を迫られる。公共図書館ではなかなか動きがなかったが,今年度に入って問い合わせや研
 修会での講演依頼がある。解消法に対する意識が少し出てきたか。今年は日本点字図書館の
 創設者・本間一夫の生誕100年。秋に日点と本間一夫に関する図書を発行。
○評 岡山は,県立が施設のみ指定管理で,公共では指定管理がほとんどなかったが,高梁市と
 玉野市の指定管理が確定。県北の小図書館が地元NPOに指定管理と,最近の状況に衝撃を受け
 ている。「県図書館協会からも意見を出してほしい」との要望がある。岡山市は,2013年度
 に「市立図書館の在り方」が提案され,地区館整備を行う予定だったが,予算が厳しく,進
 展していない。合併債などがなければ建設困難な状況である。中央館は祝日と第2日曜が開館に。
○評 JLAの教育部会と国際交流部会で活動している。教育部会では,全国図書館大会分科会と
 年2回の研究集会を柱に,教育の質の保証と認証・評価の在り方を検討する。また学校司書の
 養成,学校司書に求められる要件を検討し,文科省にどう提言していくか。他団体との連携を
 推進して,日図研とも協力していきたい。JLAの国際交流事業ではアリゾナ州とホーナー・
 フェローシップ・プログラムを実施。今秋の来日にあたり,京都,大阪の図書館にも協力を
 依頼。来年8月,国際学校図書館協議会(IASL)世界大会を明治大学で開催。多くの方に参加
 いただきたい。
○評 東京都の公共図書館について。23区のほとんどは,荒川区を除き指定管理に積極的。職員
 交流がない。区以外の都市部も少しずつ指定管理に。23区の場合,自治体非常勤職員の試験
 か指定管理者の試験を受けて働くしかない状況。非常勤でも雇用止めがある。足立区では5年
 間。待遇は,1日7.5時間,週4日で月収20万円。地域館はかつて非常勤館長を採用し,月収
 25万円。足立区は中央館のみが直営で,14の地域館はすべて指定管理。新宿区,大田区も
 同様。中央館を含めすべて指定管理の区は,江戸川区である。
○評 会員増強のアイデアについて。研究グループは人材育成や情報交換等に貢献してきた。
 研究心を持つ人や,研究心はあるが技法がない人も多い。そういう人を惹きつけるものを提
 供していく。研究グループやプロジェクトチームなど,若手と研究者が一体となって研究活
 動を行い,そこで磨き,育てていく取り組みができれば。2013年にワークショップを始めた
 のも,そんな考えがあった。“研修”ではなく“研究”につなげることが大事。
○評 勤務先の大学では,3月の司書採用の連絡はない。ネットに募集が出ているので,学生が
 応募したり学生に伝えることはある。3月では図書館以外の正規職採用が決まっている学生
 が多い。司書の正規採用枠が少しずつ出てきている。続いてほしい。
 大学図書館では,円安の影響でこの2年くらい資料(図書)が買えないという事態が発生。
 明治大学でPPVを導入と報道された。他大学はどうか。
○評 大阪から岡山の大学に異動したばかり。岡山は学校図書館が活発。司書課程の履修費4万
 円でも,受講生が約100名/学年いる。絶対司書になりたいのは1割程度。就職問題が悩ま
 しい。
 LLブック『わたしのかぞく』を出版した。
○評 勤務校には2,3月に数人単位で求人の連絡があるが,行く学生がいない。90人に情報を
 送ったが,10人希望して9人採用,残り1人は非常勤職員。
 今年度,図書館情報学コースの大学院を新設した。入学者8名の所属は,大学3名,公共3名,
 学校1名,公共の退職者1名である。自分の中のイメージと異なり,院生は大学院での学びを
 研究活動と捉えておらず,研究が図書館への就職に結び付いていない。ワークショップや研
 究グループは,関心のある人が興味を抱くトピックであるだけでなく,日図研への入会につ
 ながる仕掛けやテーマ設定が必要では。
○評 研究委員である。研究例会は,テーマにより毎回参加者数が異なるが,参加しやすい曜日
 ・時間を伺いたい。また,研究大会や図書館学セミナーのテーマ,講師を毎月の委員会で議
 論し検討するが,理事会で承認されないことがある。次の委員会で再検討しても,理事会は
 2か月に1度開催のため承認に時間がかかり,講師に依頼すると第一候補や第二候補に断られ
 る事態も生じている。研究委員会との意見交換を頻繁に行ってほしい。
○評 会員数の減少傾向について。現場の職員は50代が多く,定年まで大過なくすごそうという
 意識があり,急に勉強も難しい。日図研への入会は考えにくい。しかし,会員の世代別人数
 を把握することで会員減少への中長期的な対策を立てやすくなるのでは。例えば,研究例会
 や研究大会のチラシを『界』送付の際に封入し,職員休憩室や司書課程の掲示板などに張っ
 てもらって,日図研の認知度を高める工夫を考えては。2次元バーコードとスマートフォンで
 情報をチェックできるような仕掛けなどもあるとよい。検討してほしい。
○評 滋賀県の市町村でも武雄市の視察に行っているが,指定管理は今のところない。市民や関
 係者が粘り強く押しとどめている。県立で新規職員3名,20年ぶりに採用。1人は視覚障害の方。
 日図研へ入会を勧めたがチラシだけでは困難。方法を考えたい。
○評 図書館関係団体ではまずJLAに入会。就職後,日図研と図書館学会に入った。当時は,整理
 技術研究グループ(現・情報組織化研究グループ)の活動が盛んだった。その後,ライブラ
 リーオートメーション研究会を設立。後に女性図書館職研究会(現・図書館職の記録研究グ
 ループ)を深井耀子さんと立ち上げた。いずれも日図研の研究グループとなった。研究グル
 ープ助成をいただき,図書館員に光を当てて記録を作成。最新刊では,河村宏氏を取り上げ
 ている。

(記録・文責 松井純子 大阪芸術大学)