日本図書館研究会評議員会報告
- とき
- 2011年5月29日(日)13:30〜16:45
- ところ
- 大阪市立中央図書館
- 議題
- 1) 2010年度事業報告
2) 2010年度決算報告
3) 2010年度監査報告
4) 2011年度事業計画案
5) 2011年度予算案
- 議長
- 高鍬裕樹氏(大阪教育大学)
審議の概要
川崎理事長の挨拶の後,議長に高鍬裕樹氏を選出して審議を行った。その概要は以下のとおり。
0)2011−2012年度役員選挙結果報告(垣口選挙管理委員長),選出理事会報告,通信評議員会報告,理事役割分担(事務局長)
1) 2010年度事業報告(事務局長)
会員の動態は,入会(個人41名,団体0件),退会(個人50名,団体14件)である。2010年度末の会員数は812名で,前年同期より9名の減となった。主な活動として,『図書館界』第62巻の発行,第52回研究大会および2010年度図書館学セミナーの実施などである。
2)2010年度決算報告,および3)2010年度監査報告(いずれも『図書館界』63巻1号参照)を提案。
決算報告は事務局長,監査報告は伊藤監事が報告。また塩見監事から補足意見があった。
質疑と意見
*(評)は評議員,(理)は理事を指す
- (評)研究大会や図書館学セミナーの参加費は予算書のどこにでてくるのか?
- (理)研究大会・図書館学セミナーについては,研究委員会の経費40万円の中で執行しており,研究委員会の中で処理している。直接的に収支関係があがってくる訳ではない。
- (評)赤字になったら支出に出てくるが,黒字になったら出てこないということになる。そんなことはないと思うが,悪いことをしようと思えばできることになる。公開して欲しいと思う。
- (理)黒字分は内部留保している。不透明というのであれば,ディスクロージャー(情報公開)しないといけないと考えている。承っておきたいと思う。
- (評)会員が減っているが,一方,研究大会やセミナーは参加者が多かったということだが,非会員の割合が多かったのか?大会やセミナーの会場で入会した人はいたのか?
- (理)大会・セミナーの場ではあまりいない。入会案内は非会員に配布した。
- (評)研究大会・セミナーで公共図書館職員の参加がどの位の割合だったのか?
- (理)統計は取っていない。参加者名簿があるので回覧する。
- (評)研究大会は参加できなかったが,セミナーに参加した。公共図書館の人の参加が少なかったと思う。研究大会・セミナーの内容が研究者中心の内容になってきているのではないかと感じている。公共図書館の現場の人にとって魅力のある内容になっていないのではないか。
- (評)セミナーの発表者が電子書籍の推進者ばかりになっていたのではないか。現場の悩み・問題点を語るような人がパネラーにいなかったのではないか。
- (評)セミナーの内容は良かった。公共図書館の問題を取り上げるのであれば,第二弾として企画すれば良いのではないか。
- (評)研究大会では電子書籍の問題について,公共図書館の職員からの報告も行われていた。
- (理)セミナーについては研究委員会での内容検討の中でも,公共図書館からの報告も考えたが,結果的には報告者がいなかった。また電子書籍を推進という立場で企画したつもりは全くない。批判的な視点も持ちながら企画した。足りない所は今後また補っていきたい。
- (評)公共図書館からの研究会の活動への参加が減っていることについてどう考えているか。
- (理)これまで公共図書館からの参加を考慮して日曜・月曜開催をしてきたが,今回は報告者の都合で土曜・日曜になり,若干影響したかもしれない。研究グループの中には公共図書館からの参加も多くある。『界』への原稿についても,現場職員も投稿しやすい「現場からの提言」を奨励賞の対象にするなどの対応もとっている。
- (評)ブロックセミナーについて監査報告で指摘があるが,九州ブロックでは会員・非会員の参加料に区別をつけている。会員の獲得に繋がるかという点については,公共図書館・学校図書館からの参加は多いが,入会は難しいというのが現実。
- (評)一般会計決算で雑収入として40万円ほどあがっているが,これは事務所使用料が多かったのか,カンパが多かったのか。
- (理)カンパが多かった。事務所使用料は伸びていない。
- (評)奨励賞の『界』の報告について,最後の段落の内容は執筆者の個人的な意見で載せるべきではないと思う。また理事会として原稿に責任は持たないのか。
- (理)選考は選考委員会で行ったが,選評は見ていない。見逃したことで責任があると言われればその通りである。
- (評)特別会計の収入の「その他」の項目の備考欄で2つのタイトルがあがっているが,この2タイトルだけなのか
- (理)この2つは代表的なものの例示である。他の資料も数は多くないが売れている。
*2010年度事業報告,2010年度決算報告および監査報告を全員の賛成で承認。
4) 2011年度事業計画案
2011年度事業計画案(『図書館界』63巻1号参照)を事務局長が説明。
5) 2011年度予算案
2011年度一般会計予算案,同特別会計予算案,同第2特別会計予算案(『図書館界』63巻1号参照)を事務局長が説明。
質疑と意見
*(評)は評議員,(理)は理事を指す
- (理)研究会では,被災地の会員の支援ということで,被災された個人会員・団体会員の会費一年間免除を決めたが,現在個人1名,団体1団体から申請されている。また義援金として50万円を日図協に届けた。
- (理)研究委員会としては,セミナーは今年度開かれないので,研究大会の中で震災関連のテーマで実施したいと考えている。また原発の問題については研究例会などでの実施を検討中。
- (理)ホームページに関しては,『界』の震災特集などをいち早くアップした。また計画停電の関係でNIIに置かれたHPの運用が困難になったため,臨時のサイトを立ち上げた。
- (評)支出に今年度国際図書館セミナーがあるとして,予算が30万円計上されているが,この金額で足りるのか。
- (理)今年は11月上旬に上海から3名来日される。会場費,宿泊代,通訳・翻訳などを30万円で収めるつもりである。
- (評)前回会員を増やすために,新入会員には希望の刊行物をプレゼントするという話があったが,制度は動いているのか。入会申込書には書いていない。
- (理)着実に実行している。
- (評)日図協は非正規職員の会費の減額を決めたが,日図研は非正規職員の減額は考えないのか。
- (理)昨年の通信総会で学生会員の設置と会費を決定していただいた。非正規職員という会員区別とその会費については,本会の会費が他に比べ相対的に安いこともあり,そのままとした。
- (評)第2特別会計予算について,監査でも奨励賞の事務経費を一般会計から移すべきとの指摘があったが,今年度の予算には反映されていないが,どのようにされるのか。
- (理)実情としては賞状の紙代程度である。第2特別会計への移行は検討中である。
*2011年度事業計画案,2011年度一般会計予算案,同特別会計予算案,同第2特別会計予算案は,いずれも全員賛成で承認。
主要な意見および情報交換
- 公共図書館員の参加が少ないという話だが,公共図書館の現場は非正規職員が6割を超え,研修に出ることも極めて困難になっている。また大阪の場合,府立図書館やOLA(大阪公共図書館協会)が実務的な研修をしているので,研究会のような視点を変えたテーマを取り上げてくれるのはありがたい。
- 日図研の良いところは館種を超えて勉強ができる,発表が聞けることだと思う。この形は今後も続ける必要がある。ただ発表者が研究者に偏っているのではないかということは私も感じる。これは公共図書館の正規職員が減っているのが大きく影響している。
- 「光をそそぐ交付金」について,何に使ったかといった報告を上げていく必要がある。交付金は少なくとも3年は継続させないといけない。文科省も公共図書館に最も使われている事実は把握しているが,具体的中身を伝え,継続が必要なことを知らせていく必要がある。
- 「光をそそぐ交付金」は申請期間が短く大変だった。しかも3月11日に震災があり,本が入らないなど大変だった。でも検証していくことは大切だと思う。
- 「光をそそぐ交付金」について,初年度では措置できなかった事業が残っている。財政からは震災で次年度は切られるのではないかと言われている。継続されないとどうしようか危惧している。
- 今の国会に図書館法の図書館協議会関連条文の改正を含む一括処理法案が出ているという話がある。図書館協議会の委員の選定について条例に明記しなければならないといったことが書かれているようだ。この法案の審議状況を知りたい。
- 地域主権戦略大綱に基づき法案がまとめられ,4月5日に国会に上程されている。図書館法15-16条の協議会委員に関する規制を緩和するためとされている。国会で受理しただけで審議は一切行われていない。一括法なので文部科学委員会で審議されることはない。文部科学省に問い合わせしても答えてくれない。
- 上海市図書館学会との交流について,上海で行われる時には広報などを使って大々的に人を集めている。日本での大会は前回もそんなに人が集まっていない。もっと人を集める方法がないかなと思っている。
- 今年は福島でブロックセミナーをするのは,原発の関係で難しいと思う。ただ図書館で必要な資料の救済方法とか,ノウハウを伝えていただけるようなセミナー・研修会なら参加できるのではないかと考えている。
- (日図協・松岡事務局長)震災義援金を研究会からもいただいた。26日現在で811万円ほど集まっている。図書館の復旧・復興に限定したということで皆さんの期待も大きいと感じる。今後の図書館の復旧・復興に対して,今だからこそ図書館が必要なのだということを訴えていきたい。
もうひとつ福島原発問題で福島の図書館が何もできなくなっている。放射能汚染された図書を利用することも不可能である。その補償や今後のサービスをどうするかも課題となっている。(このあと福島の放射能汚染についても意見交換した。)
- 日図研の中に会員間の意見交換をするメーリングリストがあると,役立つと思う。
- (HP担当から)日図研のHPはNIIのサーバーを利用しているが,これが今年度末で利用できなくなるので,民間のサーバーを使うことになり,データの移行処理をしている。URLなども少し変わるので,またお知らせしたい。
*評議員から文書で寄せられた意見
- ○編集委員長へ
- 「現場からの提言」はぜひ必要なので声をかけたりすることも大切ですね。「新中国図書館の60年」について集中掲載は本研究会ならではの魅力的な企画です。
- ○研究委員長へ
- 大震災に関わる研究をとのことですが,確かに1996年2月の『震災から1年』の取り組みは重要で,歴史に残る大会でした。深刻な事態なので,企画はむつかしいと思いますがよろしくお願いします。
- ○「監査報告」について
- ふみこんだ内容ですが,このような記述は今後も必要なことではないでしょうか。ブロックセミナーで会員と非会員の区別必要ということなど,収入に関わることで監査にふさわしいご意見と思います。
出席者
- 《評議員》
- (北海道)渡辺重夫,(東北)鈴木史穂,(関東)松岡要,(北陸)参納哲郎,(東海)田中敦司,(近畿)喜多由美子,高鍬裕樹,田口瑛子,谷嶋正彦,前川和子,(中国)田井郁久雄,西尾肇,(四国)松村信子,(九州)永利和則
出席14人 委任状提出6人 計20人
[評議員定数25人,成立要件13人以上]
- 《理事長》
- 川崎良孝
- 《事務局長》
- 前田章夫
- 《理事》
- 狩野ゆき,岸本岳文,寒川登,志保田務,高木享子,竹島昭雄,前川敦子,松井一郎,松井純子,山口源治郎,渡邊隆弘
- 《監事》
- 伊藤昭治,塩見昇
- 《選挙管理委員長》
- 垣口弥生子
- 《事務局》
- 遠藤眞次郎,松井宏
(文責:事務局)