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オーラルヒストリー研究グループの歴史

オーラルヒストリー研究グループ(以下本グループ)結成にむけた胎動は、1991年12月川崎良孝氏の次のような呼びかけに始まる。
図書館史の重要事項について諸先輩の生の声を聞き、それを残しておくことは、図書館史研究のみならず、図書館員にとっても重要なことである。この関心は特に若い図書館史研究者にとって、強くその必要が感じられている。このグループは、そうした関心をもつ人々が集まり、一つのグループとして活動していこうとするものである。と同時に、単にいわゆる図書館史だけにとどまらず、先駆的なサービスに尽力した人々を広く探りだし、そうした人の記録を残すことも意図している。
翌1992年2月および3月に、川崎氏のアピールに呼応した有志が集まり、グループの具体的な活動内容等を協議し、『中小都市における公共図書館の運営』(以下『中小レポート』)を当面の共同研究の課題とすることにした。そして日本図書館研究会にグループ助成を申請し、6月の理事会において、日図研の研究グループとして正式に承認されたのである。

本グループではこれまで、前記のように『中小レポート』の研究をメインテーマとして、活動を行ってきた。以下に年度を追ってその概要を記す。

○ 1992年度:『中小レポート』関連文献の収集とその分析

松野高徳氏を中心に、『中小レポート』関連文献の収集を進めた。8月に合宿を行い、関連文献の検討を行い、今後の活動計画等を協議した。その結果『中小レポート』の成立過程に焦点をあてて、さらに研究を深めていくことになった。なおその成果は、1993年3月の日図研第34回研究大会で、「『中小レポート』の成立とその背景」と題して、発表されている。

○ 1993・94年度:インタビューの実施

1992年度の活動をうけて、『中小レポート』の作成に関わった6氏へのインタビューを実施し、その記録の整理を行った。インタビューをお願いしたのは以下の方々である。 これらのインタビューのうち、前川氏分は「現代公立図書館の課題と中小レポートの思想」と題して『図書館界』46巻5号(1995年1月)に、石井氏分は「『中小都市における公共図書館の運営』(中小レポート)の成立とその思想」と題して『図書館史研究』11号(1995年8月)に、それぞれ掲載されている。
この間、1994年2月の日図研第35回研究大会で、「『中小レポート』研究」と題して、また1995年2月の第36回研究大会では、「『中小レポート』研究(最終)」と題して、本グループの研究活動の報告がなされた。
加えて1993年10月の日本図書館学会第41回研究大会のシンポジウム「戦後公共図書館と『中小レポート』」で、川崎氏が司会をつとめ、山口源治郎氏がパネリストとして「『中小レポート』研究の現状と課題」と題する発表を行った。また先述の日図研第36回研究大会シンポジウム“あらためて貸出を考える”では、山口氏が「中小レポート以降の『貸出』をめぐる論議」と題する発表を行った。

○ 1995年度:研究成果取りまとめ

これまでの研究成果の刊行を目指して、インタビュー記録の整理、『中小レポート』関連年表、『中小レポート』関連文献目録、ならびに解説の作成が、山口氏を中心に進行中である。

(小黒浩司 『図書館界』48巻4号pp.246−247より)