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図書館学教育研究グループの歴史

日図研50年史から

<沿革>

当研究グループは、1972年12月理事会で承認された。当時、日図研事務局長 であった高橋重臣氏により結成されたものである。その頃の時代的背景としては、「図書館学教育改善試案」(『図書館雑誌』66(2)1972.6)が図書館学教育関係者のみならず、広く図書館界全体にわたって議論を呼ぶところとなり、翌1973年の3月には、「図書館学教育を考える」というテーマのもとに、同案についての公開討論会(『界』25(2)1973.8)開催を控えており、おのずと会員の結束が求められる情勢にあった。しかしながら、当時、日図研は、“未曾有の財政危機”にあり、高橋氏は職掌上、研究調査費(年額1万円)の執行も苦慮された(実際、支出せず)こと、その他の理由から、研究会の諸活動も困難を極めたようである。そのようなこともあって、グループ研究発表も、わずかに1977年度研究大会において、高橋氏が小倉親雄・森耕一両氏らと協議して、「図書館学教育の現状を考える」というテーマでの発表(『界』30(1))が、記録に残されている程度である。
しかるに1986年12月に及んで近畿地区図書館学科協議会の席上、「“時代の要請にそった”司書講習規程の改正を研究・準備し、かつ文部省に積極的に働きかけてはどうか」という塩見提案がなされた。これを機に当研究グループが、1987年2月に“再発足”するところとなり、今日に至っている。

<構成/事務局>

会員は主として養成の立場にある者が多数を占めるが、図書館情報学の研究/教育もさることながら、情報化時代、生涯学習社会に求められる図書館員養成をめざして、共通理念を構築し、現実の問題に対処することを主たる目的としているところから、養成者である/なしを問わず、会合への参加を歓迎している。

事務局:京都市上京区・同志社大学司書課程資料室内

<活動/取り組みテーマ>

研究例会は、原則として隔月(主として奇数月の第4土曜日、午後2時から)ごとに上記、同志社大学において行われている。例会の報告は記録編集幹事の柴田正美氏による『図書館学教育研究グループ通信』(隔月刊)が刊行され、現在69号に至っている。また、『界』にも当研究会の活動報告は随時、掲載されている。それらに加えて、2月の研究大会第1日でグループ研究発表が行われる。これまでの主たるテーマは、「司書養成科目<省令>改訂について」(1988)、「わが国における図書館学教育の動向:近畿地区の開講大学における教育改善の現状調査/専任不在の大学・短大の問題点/専任の図書館学教育担当者の状況」(1989)、「省令科目『情報管理』の現実と期待/(同科目の)教育の現状と課題」(1990/1991)、「『司書・司書補講習の科目の内容』改正−最近の動き」(1992)、「わが国における図書館学教育の動向」(1994)というように、一貫して文部省のカリキュラム改定の動きと関連するテーマとなっている。これは、当研究グループが、“再発足”時において、「任務・方針と して、(1)図書館法施行規則にもとづく司書講習科目について単位数および組み立ての変更をも含む科目内容の見直し、(2)近畿地区において学科レベル以上の図書館学開講大学を実現する、の2つを挙げた。後者については、どのようなカリキュラムをもち、教育の目標をどこに置くのかという根本的な課題から、受け皿としての大学組織そのものの可能性の有無など幅広くかつ現実とのつながりをもった検討を必要とするので、長期的課題と設定し、当面は、前者の司書養成にかかわる部分を取り上げることにした」(『界』40(2)1988.7,p.70)ことによるものであり、同時に緊急性を優先するものであった。
現在、司書養成のためのカリキュラム改定(試)案として、「日図協案」(柴田正美氏に負うところが大であるところから「柴田案」ともいう)が存在するが、同案は当初、当研究グループの地道な勉強学習会から始まり、のちに日図協・図書館学教育部会(幹事会)/研究集会、全国図書館大会(<図書館員養成>分科会)、日図協・各種役員会、全国の会員への提案・検討/討議・承認、文部省でのヒアリングを経て今日に至っている。今後、予想される文部省・生涯学習審議会の答申への足がかりとなることを切望するところである。
例会における、これまでの個人発表については、例えば、以下のとおりである:「学部レベルのカリキュラムをさぐる」(石塚栄二氏)、「学生交流の場の提案」(塩見昇氏)、「図書館実習について」(渡辺信一氏)、「柴田<カリキュラム>試案について」(柴田正美氏)、「図書館学教育と障害者サービス」(天満隆之輔、深井耀子、服部敦司各氏)、「博物館学芸員課程について」(田窪直規氏)、「大学図書館員養成のためのカリキュラム」(岩猿敏生氏)、「図書館専門委員会1991年6月案批判」(柴田正美氏)、「近畿地区公立図書館における試験問題について」(柴田正美、埜上衛各氏)、「生涯学習振興策に関わる中間報告について」(塩見昇氏)、「サーチャー試験につ いて」(戸田光昭氏)、「学校図書館の職員制度と養成のあり方」(佐野友彦氏)、「大学図書館職員の現状と養成」(鍵本芳雄氏)、「専門図書館員とその養成」(中井正子氏)、「九州大谷短大の情報司書コース」(二村健氏)、「情報処理技術の展開に基づく図書館情報学教育の高度化」(倉橋英逸氏)等々。
「授業実践報告」としては、「図書及び図書館史/資料目録法/図書館資料論」(村田修身氏)、「情報管理」(山田泰嗣、大城善盛各氏)、「図書館情報学概論」(塩見昇氏)、「資料整理法特論/非図書資料の管理」(山本貴子氏)、「視聴覚教材:ビデオ等を利用しての図書館教育」(佐藤毅彦氏)などである。

<要望書など>

当研究グループは、研究団体であると同時に運動体としての取り組みも求められるところであるが、これまで近畿地区図書館学科協議会(塩見昇氏)より「 司書養成科目(省令)改定につき文部省への働きかけについて(要請)」(1986年12月)を皮切りに、社会教育審議会ワーキング・グループの「司書及び司書補の講習内容見直しのための素案」が成案となった場合の危機感から提出した「要望書」(1990年4月)、「大学院前期(修士)課程における特別選抜試験(いわゆる『飛び級』入試)合格者が司書資格取得を断念しなければならない事態について(要望)」(1991年5月)など、日図協・理事長/図書館学教育部会長あて<要望書>を提出してきた。それらは全国図書館大会なり、日図協・理事長を通して文部省当局なりへの意志表示となり、一定の成果は収められたものと思われる。また、図書館員養成に関心をもつ、全国の諸氏へのいささかの問題提起ともなったと確信するところである。

日図研の五十年にわたる歴史と伝統のなかで、“再発足”から数えると、いまだ十年に満たぬ研究グループではあるが、21世紀における図書館員の養成/図書館学教育をめざして、さらに歩み続けねばならない。

(渡辺信一 『図書館界』48巻4号 pp.240−241より)