TOP > 大会・研究会等 > ブロックセミナー > 2012年度 > / Last update: 2013.3.17
はじめに,高木享子理事から日本図書館研究会の活動についての紹介がありました。
第1部 図書館の力 〜「絵本の中の図書館」と「私たちの図書館宣言」から考える図書館〜
まず,「静岡市の図書館をよくする会(現・静岡図書館友の会)」の会長として長年図書館を支えてきた講師・草谷桂子氏に,“図書館”に関わってきた理由をお話しいただきました。 ご自身が主宰された家庭文庫から発展した「社会と繋がっていたい」という思い,「自治体の文化レベルのバロメーターが“図書館”」であること,“図書館”は「中立で公正に歴史を保存するところ」,「“判断するのはあなた”という,懐の深いところ」,そして「図書館は,情報と資料であらゆる活動を支援している」という“図書館”に対する信頼を,市民の視点で語ってくださいました。
次に,図書館や司書が登場する絵本を「生活の中に溶け込んでいる図書館」,「司書さんの魅力」,「さまざまな図書館」,「言葉の力・図書館の力」の4つのテーマに分け,市民にとって“図書館”とはどのような存在であるべきなのかを示されました。
“図書館”をテーマとした大人のためのブックトークだったと言ってよいと思います。約50冊の絵本について,“図書館”や“司書”についてどう表現されているかを示しながら,お話ししてくださいました。子どもにも理解できるシンプルな言葉による絵本は,論理的な言葉よりもストレートに核心をついているように感じました。 草谷氏ご自身の著書『さびしい時間のとなり』(ポプラ社)には,図書館について次のように書かれています。
ここは 風のとおり道/時空をこえていまにつづき/未来にむかって吹く風/さびしいあなたも/うれしいあなたも/荷物をおろして/風に吹かれてみませんか?/きっと となりに誰かいる/きっと となりに夢がある
「図書館とは」という真理を絵本で学んだ後,図書館友の会全国連絡会による「私たちの図書館宣言」について,お話しいただきました。「宣言」ができるまでの流れは,1994年に始まります。「宣言」の中に,図書館が「無料」で利用できることを加えたこと,図書館は“施設”なのか,“機関”なのかという議論をされたことなど,市民が図書館について真剣に考えてきた歩みは,日本の図書館史にいつまでも残ると思います。
第2部 本の持つ力 〜3.11後の絵本・児童書を中心に〜
第2部では,東日本大震災以後の児童書・絵本について,「災害や体験をもとに創作」,「普通の生活ができる喜び」,「その他・写真・エッセイ・詩・文集等」,「ノンフィクション」,「コミック」,「“命”について考える」,「知識・科学の本」,「見直されている本」の8つのカテゴリーに分け,約120冊の資料をご紹介いただきました。東日本大震災について,子ども向けに書かれたものが想像以上に多く出版されていて驚きました。そして,絵本は「時代と社会を映す鏡」であり,「戦争や災害などの大きな事件が起こったり,社会不安がある時代には芸術や文学が花開く」という草谷氏の指摘に納得しました。 被災地で図書館にかかわる者として,震災関連の資料,とくに子どもに向けて書かれた資料については,積極的に学んでいきたいと思いました。 会場には,草谷氏が紹介された児童資料の中から約150点が展示され,参加者が休憩時間に手にとって資料を読む姿が見られました。
講演後,参加された方から,「図書館をテーマにしたブックトークをしてみたくなった」,「震災関連の児童書について知る貴重な機会になった」などの感想をいただきました。 本セミナーを福島で開催させていただいたことに深く感謝申し上げます。
(記録文責:鈴木史穂 福島県立図書館)