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日本図書館研究会 九州ブロックセミナー報告


日 時:
2012年12月1日(土)13:30〜17:00
会 場:
佐賀市立図書館 多目的ホール
テーマ:
「法に絡んだ日常の疑問を考える」

講 師
山本順一氏(桃山学院大学経営学部教授)

報告

 佐賀市立図書館で開催された九州ブロックセミナーには,49名の参加者がありました。

 はじめに,山口真也氏(九州ブロック評議員)より,日本図書館研究会の活動と講師の紹介を行いました。

 「図書館における法情報サービスの展開」と題した,山本順一氏の講演では,日本で本人訴訟が増加してきている現実,法律書等を読んで本人訴訟を一念発起した方の事例や,国内弁護士の半数が東京に集中していることから,今後,地方においてローライブラリアンの役割に期待が高まること等をお話しいただきました。加えて,住民ニーズの高度化により,図書館の存在意義が示され,ビジネス支援サービス,法情報サービスが展開されてきたことに焦点が当てられ,その中でも図書館における法情報サービスが,今後,更に必要とされる社会となっていくという話がなされました。その社会の中で,図書館員は一定水準の法的知識を持たないといけないと“喝”を入れられ,背筋がピンと伸びた次第でした。

 今回のセミナーは,参加者から事前に“(法にまつわる)日頃疑問に感じていること”を提出していただき,その内容を盛り込んでの講義となりました。参加者一人一人が,自分自身が出した疑問の解決を求めて目を光らせ,講義に聞き入り,あっと言う間に過ぎた時間となりました。

 事前に参加者から提出された日頃の疑問には,ゼンリン住宅地図の複写,表紙画像の許諾,督促の時効,図書館資料の減価償却,不審者に退館命令は出せるのか等,多くの疑問が寄せられていました。図書館で働く多くの人達が,常に,これでいいのか?これでよかったのか?と模索している現状が表れたような気がします。その中でも,多くの図書館で受け入れられている地域の学校からの職場体験において,「生徒が窓口対応をして,個人情報を閲覧できるのは適切だろうか」という疑問には,これまで当たり前に行っていたことが,他館の図書館員が首をかしげながら受け入れていた事実と,その根拠を振り返り,何の抵抗もなく当たり前でいた自分自身を原点に返って考えることを気付かせてもらえたように感じます。

 講演後は,会場の参加者と講師で質疑応答が交わされ,この時間は,山本先生が“お悩み解決隊”へと扮し,日常の疑問から解放された参加者の顔が穏やかな顔へと移っていった時間となりました。

 今回,佐賀でのセミナー開催の話が上がった時,山本先生から,「みんなで考えながら過ごせる時間となるように」との提案もあり,参加者全員が,頷き,納得し合い,賢くなって行く時間を共有したひとときでした。当初の目的であった,「みんなで考える」ことが達成できたセミナーとなりました。また,会終了後に参加の方から,「他館の図書館員の声を聞いて,初めて気付くことがたくさんある」との声も届き,県域を越えて,図書館員が一堂に会するこのような機会が持てたことは,図書館で働く者同志が切磋琢磨し合いスキルアップしていくきっかけになったことと思います。

 本セミナーの開催に際して,多くの方に支えられ,ご協力を賜りましたことに感謝申し上げます。

(文責:横尾三津子 佐賀県立図書館)