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《座標》
『図書館界』72巻6号 (March 2021)

コロナ禍の学校図書館

狩野 ゆき

  一斉休校要請からあっという間に一年が過ぎました。春休みまでの我慢と思いきや,4月になってもGWにな
 っても,休校措置は続きました。退任される先生は,最後の授業にと用意していたことが生徒に伝えられずに
 なってしまいました。新任の先生は着任の挨拶もなく,オンライン授業となってしまいました。文化祭も対外
 試合も中止に(文化祭は遅れてオンライン開催となりましたが……)。なんともやるせない日々が続きました。
 
  学校図書館も生徒が来られず,新着図書が溜まるばかり。雑誌の最新号も誰にも見られないまま,入れ替え
 られていきます。
 
  子どもたちのいないこのような状況にどう対応していけばいいのか,学校図書館の存在意味までも考えまし
 た。立ち止まっていてはいけないと,それぞれの学校でできることを模索して,図書館サービスを継続してい
 きました。その一端は,今年の研究大会のシンポジウムで,「2020新型コロナウィルス対策下の学校図書
 館活動」1)をまとめられている庭井史絵氏よりも紹介があると思います。
 
  本校では,4月の学年別分散登校の時は,校舎に入れず図書館にも来られないならこっちから出掛けましょ
 うと,体育館への「出張図書館」を敢行しました。5月には貸出本送付の「宅配図書館」を実施しました。京
 都府立図書館が送料図書館持ちで郵送貸出をするという情報に触発されてのことでした。(株)カーリルの「COV
 ID―19学校図書館支援プログラム」に大いにお世話になりました。半月ほどの期間の実施でしたが,利用し
 たのは中1生が一番多かったです。自分たちの教室やリアル図書館に足を踏み入れるより先に,宅配で学校図
 書館の本を手にしたのです。「4/9の移動図書館も驚きでしたが,宅配図書館すごく感動しました」「僕は元
 気で,早く学校に行きたいです」「本が読みたいです」「コロナ禍で大変な時期ですが図書館の本を借りるこ
 とができてとても有り難いです」「宅配図書館,本当に嬉しいです」「もう休みが明けそうと言う時にすいま
 せん」などの生徒の声に励まされ,やってよかったなと思う日々でした。
 
  本校は,物理的に本を届けるという方向を選択しましたが,電子図書館という選択をした学校もあります。G
 IGAスクール構想が進行している現在,これからの学校図書館のサービスの一つとして,デジタルの方向は不可
 避です。デジタルの部分とアナログの部分,そのバランスを見失わないようにして,これからの学校図書館の活
 動を考えていかなければならないのだろうと思います。
 
  夏以降,文化庁の「著作権法第31条に規定する図書館関係の権利制限規定について」の法改正に関わる動き
 の中で,学校図書館を31条図書館の範囲に含めるか否かの論争が起こりました。「第1回図書館関係の権利制
 限規定の在り方に関するワーキングチーム」で,「現時点ではあまりコピーサービス・送信サービスのニーズが
 ないことと,学校図書館と公共図書館の性質の違いなどを踏まえると,必ずしも指定されることは望んでいない」
 という意見が学校図書館団体からあったとの事務局報告にはびっくりさせられました。学校図書館法は,生涯教
 育の理念をうたう教育基本法を上位法としており,学校の中にある「図書館」です。サービス対象が限定されて
 いることや学校の教育課程の展開に寄与することを目的としていることなどの違いはあっても,生涯にわたって
 図書館を使える力を育むために,35条で手厚く対処されているとは言え,学校図書館でも基本的な図書館サー
 ビスは同様に提供されるべきだと考えます。11月に出された報告書の「小・中・高の学校図書館を法第31条
 の対象となる『図書館等』に追加することについては,昨今,アクティブラーニングなど従来の授業の枠にとら
 われない児童生徒等の主体的な学習が重視されるとともに,オンラインでの教育・指導等が普及する中で,図書
 館における各種サービスへのニーズも高まっていると考えられる」の文言に,ひとまず胸を撫で下ろしたのは私
 だけではないでしょう。

注 1)https://sites.google.com/view/covid19schoollibrary/

(かのう ゆき 理事・灘中学校灘高等学校)