TOP > 『図書館界』 > 71巻 > 4号 > / Last update: 2019.11.4
本稿は,1912年に発生したドイツ民衆図書館における路線論争を検討した。同時に,論争の背景をなす社会史的および図書館史的文脈に着目した。具体的には,論争の当事者であった新路線派のホーフマンと,旧路線派のラーデヴィヒの言説を検討の俎上にのせ,両者の図書館の教育的役割の認識の違い,そしてその差異を構成する民衆層利用者の読書能力への捉え方の違いについて検討した。結果,これまでイデオロギー闘争として目されてきた路線論争とは,それぞれ相対する教育理念から成る論争であったことが判明した。
(まつい けんと 東京大学大学院)