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《論文抄録》
『図書館界』71巻3号 (September, 2019)

『図書館の権利宣言』(1948年)とヘレン・E. ヘインズ:明示的な積極面と黙示的な消極面

川崎 良孝

  第2次大戦後にアメリカ図書館協会が採択した1948年版『図書館の権利宣言』は,新たに2つの条を設け,検閲に反対するとともに,検閲には関係団体と協力して対抗すると宣言した。図書選択の原理を示した従来の『権利宣言』を乗り越え,憲法が保障する表現の自由の擁護を打ち出したという点で,1948年版は高く評価されてきた。1948年版の原案作成者はヘレン・E. ヘインズだが,ヘインズの原案から削除された部分があった。それは少数者の権利を重視するという内容の文言であり,この文言は1939年初版に盛り込まれてもいた。本稿は1948年版の作成過程を追求し,検閲にたいする明示的な積極面とともに,黙示的に広範な社会的問題を捨象したことを指摘することで,1948年版の理解に厚みを加える。

(かわさき よしたか 京都大学名誉教授)