TOP > 『図書館界』 > 67巻 > 1号 > / Last update: 2015.5.17
本稿は,明治30年代以降,全国各地に設立された教育会図書館について論じたものである。これまで教育会設立の図書館は,人々を「教化」するための機関として一律に論じられてきたが,地域の視点から具体的に蔵書を扱っての検討は見られなかった。本稿では滋賀県八幡文庫(1904〜1909)蔵書の調査と検討を通じて,国民の「教化」という上意下達的な役割に加えて,学業支援や職業支援というまた別の役割について言及した。またこの他に,地域の有力者たちが八幡文庫へ書籍を寄贈することでその蔵書形成に関わり,かつそのことを通じて互いの連帯を保持していた可能性があったことなどを指摘した。
(しまざき さやか 京都大学大学院教育学研究科博士課程)