TOP > 『図書館界』 > 66巻 > 3号 > / Last update: 2014.8.28
本稿はフロリダ州で生じた絵本『キューバ訪問』をめぐる事件を取り上げて,経過,連邦地裁や控裁の判決を実証的に記述する。親からの除去の申し入れにたいし,教育委員会は除去を決定した。それを不服としてアメリカ自由人権協会が提訴し,控裁は教育委員会の措置を支持した。判決はピコ事件判決(1982)が示す除去の基準である「教育的適性」を梃子に,絵本の記述の誤りや省略を理由に原告の訴えを退けた。本稿は「教育的適性」という基準の曖昧さを指摘するとともに,プレジデンツ事件(1972)以降の学校図書館蔵書をめぐる裁判事件の系譜に照らして,本判決の思想的な意味を探っている。
(かわさき よしたか 京都大学大学院教育学研究科)