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《論文抄録》
『図書館界』66巻1号 (May, 2014)

啓蒙時代の図書館旅行記

河井 弘志

 ヨーロッパ18世紀に,多くの人が図書館めぐりの旅行をした。その一人学生ウッフェンバッハもドイツ,オランダ,イギリスの図書館探訪旅行をし,歴史ある図書館で貴重マヌスクリプトを実見した。大学図書館は未整備で,むしろ教授の個人図書館のほうがよかった。記録した多数の書誌データによって,旅行記は貴重図書の総合目録の役割を果たした。粗野な書誌記述は目録規則の模索段階ともいえる。鎖つき本の書見台は,書架システムのリアルな歴史である。図書館員の多くは書物や蔵書管理の基礎知識をもたず,彼の厳しい批判にさらされた。

(かわい ひろし 立教大学名誉教授)