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《座標》
『図書館界』65巻2号 (July 2013)

戦う学校司書?

狩野 ゆき

 「図書館戦争」の映画,見ましたか? グッズ物色中の会話に「仕事で使えるかも」という声が聞こえ,図書館関係者が多いのかなと思ったりした。

 勤務校の図書館にも「図書館の自由に関する宣言」を掲示している。新図書館がこの3月にできて,さっそく大きいポスターを貼った。でも,最初に気づいてくれたのは,図書委員会の交流で来館した他校の女子高生。「キャー,本物だ?!」と嬌声をあげ,写メまで撮っていった。ウチの生徒はいつもの風景の一部分で何の反応もしてくれなかったのに……。

 「図書館の自由」宣言は図書館が自由にしていいんだ宣言だと思っていたという生徒がいた。そう思えてしまうのは,宣言がわかりにくいからなのか,自由を阻止されたことがないからなのか,はたまた,私が好き勝手しているように思われているのか……。前任校の卒業生に「『図書館戦争』,狩野先生のこと?」と言われたこともある。なぜに? 私,戦ってたつもり,全然ないんだけど。

 でも,新図書館の建築に関しては,なかなか戦ったな。黙っていては利用しやすい図書館はできない。設計士やデザイナーは学校図書館をよく知らないから。必要性やイメージを積極的に訴えていく必要があったのだ。積極的すぎて,かなり“出る杭……”状態ではあったが。機能性・安全性とデザイン性は両立しないのかしらと悩んだことも。その時,とりあえずこれ読んでと設計会社の人に渡したのは,『建築家の自由』 の「新らしい図書館の建築」と鬼頭氏のインタビューのページ。板挟みになった教頭や事務長はずいぶん胃の痛い思いをしたことだろう。

 どのような図書館をつくっていくか,その道は多様だと思う。読書センターとしての機能と情報センターとしての機能,どちらもバランスよく果たせることが理想だ。昨今はデジタル環境の充実に力を入れているところも多い。が,現実問題として予算や物理的な枠もあるし,学校や生徒の状況によって考えなければならない問題もあるだろう。学校の方針などに則って,どこに重点を置くか,何を大切にしてつくるか,話し合う必要がある。

 本校の新図書館はデジタル情報センターとしては不足しているかと思われる。それは,コンピュータ教室やICT教室が図書館と近接していること,生徒のスマホやタブレットの校内持ち込みが許可されていることなどの現状から,あえての構想である。

 一番考えたのは動線だ。図書館を生徒の学校生活の動線の中に取り込むにはどうしたらいいのか。保健室や職員室と違って,特段,用事がなくても来ていいのが図書館。だから,生活動線から離れていては意味がない。通りすがりに入れるところに設けたい。しかし,残念なことにスペース上の問題から教室動線からは違うフロアになってしまった。そこで,廊下取り込みに出入り口4つという暴挙(?)に出た。また,現存校舎を取り込む形の設計となったので,耐震上取り除けない壁や柱がいくつもあり,いいのか悪いのか,多様なゾーニングをこらす結果となった。さらに,寝転ぶことを想定したソファや畳ベンチもある(よほど寝心地がいいのか,熟睡していて起こすのに苦労したことも……)。生徒はそれぞれ自分のお気に入りを見つけて過ごしている。今後,生徒や教職員がどう図書館を使っていってくれるか,楽しみでもあり,ドキドキでもある。

 見た目もかっこよく,使い勝手もいい図書館をつくるのは難しい。改めて勉強することがいっぱいあった。また,図書館を知らない人,図書館を使ったことのない人に,その機能や必要性を説明していくことの大変さ・大切さも再認識した。これからも戦っていくためには「図書館体操」 をして,体力つけなくっちゃ?!

 映画「図書館戦争」もいくつかの図書館を組み合わせ,CG合成をしているそうだ。新潟・十日町情報館,水戸市立西部図書館,北九州市立中央図書館,山梨県立図書館には,ロケ地巡りの見学者が押し寄せているだろうか。戦闘シーンの迫力に,図書館のイメージがどれほど印象に残るかはわからないけれど。ストーリーより,背景の書架や背表紙が気になってしまったのは,図書館員のサガなのかも。

(かのう ゆき 理事 灘中学校高等学校)