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地方分権推進を図るために関連法を改正する一括法案が1999年3月26日に閣議決定され、29日国会に提出された。5月13日の衆議院本会議で趣旨説明がされ、審議に入っており、早朝の成立が見込まれている。
その中には475件の法律の一つとして図書館法の一部改正も含まれている。一昨年来の地方分権推進委員会、障害学習審議会の勧告や報告等をめぐって論議されてきた「必置規制の見直し」にかかわる内容の帰結である。
図書館法についての改正事項は次の3点である。
よく知られる東村山市をはじめ少なからぬ自治体で、条例もしくは規則によって、館長には法に定める司書の有資格者を充てることを規定してきた。ところが、既に一部の自治体で、最低基準が廃止され、13条3項から館長の司書資格要件が除かれれば、館長に有資格者を充てる根拠がなくなるのでその条項を除こうとする動きが出ている。
これはまったく曲解である。補助金の要件から館長資格を除いたということと、館長に有資格者を充てる根拠がないということとは直結しない。これこそ地方分権=自治体の裁量で主体的に判断すべきことである。
館長に有資格者を充てることは、法の全体を通じての好ましい方向であり、設置団体が主体的にそれを活かすことこそが望ましいのである。有資格館長の配置を後退させるような動きを容認してはならないし、そうした動きがあれば、法の本来の趣旨をしっかり伝えることで阻止しなければならない。特に当該自治体に働く職員各位の注意を喚起したい。
補助金の申請・受入れに際して、最低基準が掲げていた内容(館長の有資格、一定数以上の司書配置、施設規模など)が絶対条件でなくなることは事実としても、図書館設置自治体がその程度の内容(むしろそれ以上の要件)を保持することは図書館事業の発展に不可欠なことであり、各自治体でそのように努力することが望ましい。今後はそういうことは不要ですよ、といった誤った指導や理解が広がるようなことにならない注意が欠かせない。指導・助言に当たる文部省や県教委に対して、この趣旨をしっかり伝えていく必要があろう。
以上のほかに、この1年余大きな関心を集めた第17条の無料公開規定については、今回は改正の対象になっていない。1998年10月の計画部会図書館専門委員会による「外部の情報源へアクセスしてその情報を利用することは、図書館資料の利用には当たらない」という判断から、その提供に対価を徴収するか否かは設置者の判断にゆだねられるとして法改正は不要と結論づけたことの結果である。
しかしこれについては、なぜ改正されなかったかの理解と解釈を誤らないことが重要である。委員会報告そのものが、電子化された情報サービスの有料化に道を開きかねない内容を含んでいることは否めないが、決して有料化を好ましいと推奨しているわけではない。図書館資料の範囲についてもなお論議すべき内容を残しており、法が改正されないことをもって、だから電子化情報の提供は有料でもいいのだと短絡させてはならない。図書館サービスが無料の原則を貫くことが基本であり、無料で提供できる情報サービスの可能性とそのための条件整備をさぐることがまずは必要である。
図書館法制定50周年を来年に控えた現在、法の改悪がなされることは極めて遺憾なことであるが、趣旨の曲解と行政指導で改悪が一層倍加されることを許してはならない。
(しおみ のぼる 本会理事長)