日図研ホームページも開設2年目となりました。この間、原稿を最終的にホームページに掲載する作業(テキストにレイアウトやリンクを指示するタグ付けをして、学術情報センターのWWWサーバに送付する)を担当させていただいています。
WWWサーバではアクセスログが取られているので、利用状況をある程度把握することができます。以下、1998年3月20日〜4月30日の利用統計について少しご紹介します。『界』でいうと49巻6号の内容が掲載されていた時期です。
この間、各画面(各文書)へのアクセスは合計約1800回でした。一日あたり45回です。このうち、トップページへのアクセスはほぼ400で、これが延べアクセス人数と近似していると思われます。つまり毎日10人の方が日図研を訪れ、一人当たり4.5の画面をのぞいてくれた、という計算になります。
ページ別のアクセス数をみると、「新着情報」「図書館界」「関連団体へのリンク集」が日平均1回以上見られています。目を引くのは図書館法の館長資格要件に関する「緊急アピール」で、掲載して一年近く(昨年6月から)経過しているにもかかわらず、69回のアクセスがありました。
報告はこのくらいにして、以下では一会員の立場で、今後に対する意見を申し述べることとします。
現在のホームページは、『界』のごく一部を抜粋した「告知板」的存在です。正式媒体である『界』に掲載される範囲で構成する、が大原則であり、この枠内で充実を考えれば、論文などを含むより多くの記事を採録し、『界』そのものに近づけていくという方向になります。しかし、このような電子『界』がどれだけ利用されるかと考えるとやや疑問です。一定以上長い文章を目で読む媒体としては印刷物の方が優れていますし、『界』は館界に広く流通していて探すのに不自由することもあまり考えられないからです。(電子情報には検索、蓄積、二次使用といった点で「読書」とは別の利点はありますが)
ネットワーク上の情報空間が持っている大きな強みの一つは、いわゆる灰色文献へのアクセス向上だと思います。印刷媒体ではコスト的に発信を断念せざるをえなかったり、ごく狭い範囲にしか流通できなかったような多くの情報が提供されています。
日図研でもこうした情報が発掘できるはずです。例えば研究活動の柱の一つになっている諸行事ですが、『界』ではブロックセミナーや研究例会の報告が概略的なものになっています。紙幅の都合を考えなくともよいホームページでより詳細な記録や当日配布された生の資料などを提供できれば、直接参加できなかった会員も疑似体験できますし、蓄積された記録が時間をおいて生きてくることもあります。開催案内に加えて、予稿等を事前に掲載することができれば参加者にも有益です。また、研究グループによる例会等の活動も、より詳細な情報を公開すれば意義は大きいでしょう。この部分は各グループの独自作成に任せるという方針ですが、今のところ「マルチメディアと図書館」が例会報告等を作成しているだけという状態です。私も研究グループ活動に関わっておりますので自身の反省も含めてですが、大変もったいないことと思います。
ホームページが『界』を超えた内容を発信するとなると、利用できる環境にある人だけに届き、情報の格差が生じるともいえますが、だからといって内容を『界』の枠内に固定するのでは、やはり可能性を自ら狭めてしまうことになるのではないでしょうか。『界』をきちんと守ったうえで、さらなる情報発信を新しい媒体で行なうことは、旧媒体の利用者に不利益をもたらすものではありません。新しい媒体に対してはその可能性を最大限に生かす姿勢が必要でしょう。
とはいえ作成担当者の立場に戻ると、実はそう簡単に拡充がはかれる状況にもありません。原稿担当者には相当のご苦労があるようです。定常的な情報の流れで自然に電子テキストも出来上がるような体制がないと効率化は困難で、担当者というより研究会全体で考えて頂く問題になります。
ともあれまず1年です。今後徐々に充実したホームページに育てていければと願います。
(わたなべ たかひろ 神戸大学図書館)