《論文抄録》
『図書館界』50巻3号 (September 1998)
集会室のあり方と図書館の原則
〜オックスフォード公立図書館事件(1989)〜
川崎 良孝
本稿は集会室の利用をめぐるオックスフォード事件判決(1989年)を手がかりに,公立図書館の基本的性格を検討する。
まずいくつかの図書館の集会室の運営に関する方針,それに同事件判決を紹介する。次に『図書館の権利宣言』,『宣言』解説文での集会室の捉え方を概観し,あわせて同判決が特に『宣言』解説文に与えた影響を指摘する。最後に,1980年『宣言』は図書館を「情報や思想のひろば」と位置づけているが,
この位置づけが同判決によって補強されたこと,および判決は図書館のいわば図書館部門と集会室部門(展示空間・掲示板を含む)の思想的統合性を求める結果になっていると主張する。