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《座標》
『図書館界』49巻5号 (January 1998)

日図研にふさわしい,長続きする国際交流とは

渡辺 信一

96年11月のALA元副会長・M.ゴーマン氏と上海図書館副館長・呉建中氏による国際講演の前後から,国際交流の波はわれわれの日図研にも押し寄せている。
そこで日図研にふさわしい,長続きのする国際交流を目指すべく,過般,理事会の席上,アンケートの用紙をお配りしておおよそのお考えを尋ねてみた。(ただし,これはあくまでも予備的調査であって本格的なものではない。)

まず質問事項(1)国際交流の地域的限定について尋ねたところ,ご回答8名のうち,必要が2名;不必要が5名であった。必要とした論拠は,本来は広く公平にすべきだが,言語ボランティアなどの関係で現実には限定される;不必要とした人は,交流は常に広げるという視点を持つこと,などが書き添えられていた。

次に,(2)交流の方法について,(A)物的交流(資料の交換など)が主か,それとも(B)人的交流(人の往来)が主と考えるべきか,は,(A)が4名,(B)が2名で,(A)については,まず物的交流で,交流が深まれば人的交流となる;いっぽう(B)は,資料交換を継続しても役立ち得る局面は少ない/交流は直接のコミュニケーションが基本である,とした。その他の意見に,相手の希望があれば資料交換もあるし,人的交流もある,という指摘もあった。
物的交流について,自由なコメント欄には,天災時(地震・大火などによる図書の亡失)や文化交流(日本に関する資料・日本語教材)など,要請に応じて積極的に;できそうなところからということで,大々的にやることはない,といった意見があった。

次に人的交流について,<外国へ>は,どの程度<公費派遣で>実施すべきか,については,(A)訪問/使節団を年に1回程度/隔年に1回程度,がそれぞれ1名ずつあり;(B)IFLA大会など,補助をすべき,が同じく1名;(C)外国からの招聘があった場合のみ,4名であった。
派遣の場合,当研究会の役員に限定すべき,1名;帰国後の貢献度を考慮して派遣すべき,1名;審査は理事長などに一任すべき,2名;場合による,とした人が1名であった。
予算的措置について,<公的派遣であれば>渡航・宿泊費用は当研究会が全額負担;予算的措置の必要はない;渡航費程度は考慮すべき;場合による;予算次第,と意見が分かれた。

<外国から>の人的交流は,(A)当研究会として招聘,2名;(B)他の図書館団体(例えば,日図協)との共催,とした人が3名であった。自由なコメント欄には,まず,予算的措置については,歓迎夕食会,図書館見学,市内観光;国内旅費のみ,あと1〜2泊程度(→日図協に来るIFLAの役員など,京都観光を兼ねて講演会など,2年に1度くらい);日図研にかかわることは,全額公費;そのつど理事会を開いて決める。人的措置については,通訳・案内者など;複数の支援グループを組織/実行委員会方式(プロジェクト方式);半額負担およびボランティア活動,という記述がなされていた。

(3)国際交流規定/マニュアルの作成について,必要,3名;不必要,2名;覚え程度のものでよい,という意見もあった。(質問事項(4)言語・文化圏;(5)連絡/調整機関など,省略。)

(6)その他,全体を通して自由なコメント欄には,次のような提案があった;機関誌(コラム)“国際交流”を設け,協力依頼も含めた関連記事を掲載;ALAやCaLAのような米国州協会との交流実現;アメリカだけでなく中国との交流を積極的に;IFLAとのパイプを重視する;日図研ホームページの英語版を充実してはどうか;外国から日図研になんらかの打診があったときに対処すればよい。

以上,理事の皆さんの代表的な声をご紹介(ただし,紙面の関係で質問事項/回答とも大幅に割愛)したが,これでお判りのように限られた人数のご意見でもこのように分かれる。日図研にとって,理想的な国際交流とは何か,どのような範囲で,どう対処すべきか?また,国際交流は,(A)受け/待ちの姿勢でいくべきか,それとも(B)多少,無理をしても一歩踏み込んだ姿勢でいくべきか,が論点となっている。
さて,あなたのご意見はいかが?

(わたなべ しんいち 同志社大学文学部)