日図研のホームページ(以下,「HP」と記す)が学術情報センターの学会村に開設されて,はや9ヶ月。おそらく,まだ一度もHPにアクセスされていない会員の方も多いと思うが,「学協会情報の発信」という学会村の趣旨に沿って,日図研も,会の概要,組織,行事案内,『図書館界』の目次と論文抄録,刊行物一覧,研究グループの紹介などといった情報を公開している。このHPの編集委員会における担当者として,今回のコラムを執筆させていただく。
さて,HPが開設されたことにより,日図研と会員を繋ぐ媒体として,『図書館界』のほかにインターネット上の電子媒体が加わったことは,変化というよりも新たな可能性の出現と捉えられる。ただし,インターネットに接続できない(あるいはしたくない)人もおられるので,現状はあくまでもオプションのサービスにすぎない。しかし,HPというメディアを利用して何ができるのか,またHPが加わることで会員にとってどんな利点が生まれるのかということは,やはり考えておく必要がある。
言うまでもなく『図書館界』は,会員の研究成果の発表の場として,あるいは日図研の行事予定や活動報告を会員に周知させる場として,ひと月おきに刊行され,会員の手元に届けられてきた。そこには,2ヶ月に1度という刊行頻度,掲載可能な分量,一方方向の情報伝達など,印刷媒体の持つ種々の制約が存在する。一方,ネット上の媒体であるHPの場合,情報を随時掲載(更新)でき,刊行時期にしばられない,紙数の制約がない,双方向の情報伝達が可能である,などの利点を持っている。このような特長を活かしつつHPを運用することができれば,『界』とHPの二本立てによる効果的な情報伝達が可能と思われるが,実情は果たしてどうだろうか。
前号のコラムにも書かれていたとおり,日図研は『界』が正式の媒体であるという立場をとっている。HPに掲載される情報も,『界』に掲載される範囲で,ということになっている。
すなわち,HPに掲載される情報のほとんどは,『界』に掲載するために集められた原稿であり,これらは行事案内や緊急アピール等,速報が必要な一部の例外を除き,『界』の発行より少し早い時期に(多少の前後はあるが),HPの技術担当者(大阪市大の北さん)にメールで送られる。「座標」はもちろん例会報告等も,『界』に掲載される内容と同一である。つまり日図研のHPは,HPとして独自の情報を含んでいるわけではなく,単に『界』の内容をネット上に移し代えているにすぎない。
その意味では,印刷媒体としての『界』の制約もまた,そのまま取り込んでいると考えられる。
さらに先述のように,『界』は学術雑誌としての機能と,日図研の広報誌としての機能を併せ持っているが,HPは両方の機能を満たしているわけではない。どちらかと言えば後者,つまり広告媒体としての機能を果たしているにすぎない。日図研に限らず,学協会のHPの多くは,良くも悪しくも当該団体の「広報・宣伝媒体」として機能していることが多い。一次情報としての学術情報,研究情報を提供しているHPはまだ少数である。日図研のHPでは,『界』に掲載された論文そのものではないが,論文の抄録(200字程度)を掲載することで,研究情報の一部を提供している。とはいえ抄録自体はあくまでも二次情報であり,『界』と同等の研究情報の提供・発信機能を持たせることはまだまだ困難である。
これまで見てきたように,日図研のHPは,「『界』との二本立て」と呼べるほどの機能は果たしていない。むしろ,『界』から受ける制約の多いメディアであると思われる。私個人は,『界』とHPを別個の媒体として切り離すべきだと考えているわけでは決してない。ただ,メディアの特長を十分活かした上で活用することが,日図研の会員に対するよりよいサービスに繋がると考えているのである。
とりわけ,双方向の情報伝達機能は,日図研のHPで最も活用できていない部分であろう。例えば『界』には,会員の意見を述べる場として《エコー》欄が設けられているが,《エコー》欄への投稿を電子メールでも受け付ける,さらにはその投稿をHPで公開し,他の会員の意見や反論をやはりメールで寄せていただく,などの方法はどうだろう。
日図研のHPが,できれば会員一人一人の声を汲み上げることのできるメディアに発展してもらいたいものである。
(まつい じゅんこ 大阪芸術大学)