《論文抄録》
『図書館界』49巻2号 (July 1997)
公共図書館サービスのクオリティに関する認識
−質問紙調査報告−
小田 光宏,マーガレット・キンネル
図書館サービスの質に関して,1,464の公共図書館を対象に実施した質問紙調査の結果を報告する。その上で,集計結果を総合した図書館像を描く。
すなわち,多くの図書館では,図書館長と図書館職員によって作成された運営方針が明文化されている。しかし,利用者に対して,方針を十分に公表しているとは言えない。質の測定は,3分の1の図書館で実施されているにとどまり,その方法も一定していない。
研修は,3分の1の図書館で行われている。8割以上の図書館は,質を高める上でなんらかの障害があると感じており,予算の不足を指摘している。質の高いサービスのためには,人的な要件とコレクションに関する要件とが不可欠と認識している。
調査結果からは,運営方針を明文化している図書館と明文化していない図書館とで,質の測定と研究の実施において差が生じていることを指摘する。また,質の高いサービスのために必要と考えられている人的な要件が,司書の専門性ならびに職制を意識したものでは必ずしもないことを強調する。