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《論文抄録》
『図書館界』49巻5号 (January 1998)

明治期の公共図書館と利用者
−図書館利用者公衆の形成過程−

永嶺 重敏

『文部省年報』の図書館閲覧者全国統計によれば,公共図書館利用者層は明治10年代から30年代にかけてまず東京を中心に形成されてきたが,この時期の利用者はまだ中産知識人層とその子弟たる学生に限定されていた。明治30年代後半から地方図書館の増大によって,地方においても利用者層が形成され,他方,都市部においても商工徒弟層をはじめとする都市下層にまで図書館利用が普及してくる。図書館での読書体験を通じて人々は近代的な読書習慣を身につけ,自立した近代読者から成る読者公衆へと成長していく。